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まだ席は四つ空いている。
中央の二席は、もちろん国王のメンデルと国王補佐のアイザックだ。
「龍王警備隊、ろんぎぬす入ります。」
着流しをゆるく着こなした長身のろんぎぬす隊長は頭を大きく下げながら入室した。後には忍び装束を着込んだユナ副隊長がいる。
私がユナ副隊長を見ていると目が合ったので慌ててそらした。
直樹さんは、あの日、蓮さん達が龍王の洞窟に入ることをユナ副隊長が見逃したような気がすると言っていた。
さらに、偶然かもしれないがろんぎぬす隊長は凛子さんが城内警備隊の隊長に昇格したタイミングで直樹さんをクビにした。その御蔭で、直樹さんは凛子さんのいる隊へ入り、副隊長になったのだ。
まだ、国王はこない。
各隊が話す中、腕組みをしたままハワード隊長は私に体を傾けた。
「おい、会議でお前は喋るなよ。」
「はい。」
「また裏切られたらたまらねーからな。」
「…………。」
私は何も答えなかった。
裏切りのルセテ――隊内で私はそう呼ばれている。
レター元副隊長やフォルトナーを殺したのは蓮さんで、その助けをしたのが私だとハワード隊長は思っている。
もちろん、それは事実だから仕方のないことだ。当時、散々責められたが否定も肯定もせず、私はひたすら黙秘を続けた。幸い国王のメンデルは実力さえあれば誰でも登用する主義だったので隊内で嫌われ者の私でも副隊長の座につくことができた。
副隊長になったが、蓮さんと出会う前と同じ様に、いや、それ以上に虐げられる日々だったが、私はまったく辛くなかった。
心の持ちようで人はこうまで変われるんだと実感した。凛子さんとの修行の日々も確実に自分が前へと進んでいると感じられ楽しくて仕方なかった。
それになにより、私には仲間ができた。
直樹さんや凛子さん、さらに驚くことにあの朝霧までもが私を支えてくれている。
だから、私は目的に向かって頑張れる。
私は必ずハワードを殺し沿岸警備隊の長となるんだ。
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