ルセテの目的

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「凛子、起きろ来るぞ。」 再び凛子さんが寝てしまったようで直樹さんが起こしていた。凛子さんがさっきと同じ様にして大きな欠伸をしているとドア横に立つ兵士が姿勢をさらに正した。 「国王さまが到着ですっ!!」 ドアが開くと、まずは国王補佐のアイザックの姿が現れた。補佐官らしく黒いスーツに身を包みその左肩口には背に装備した長刀の柄が伺える。 その背後から入ってくるパーカーを着た小柄な青年がメンデルだ。PDAを横持ちし操作しながら歩いている。恐らく対戦型の戦闘系ゲームをしているのだろう。 通常ならば国王が入室したのだから、立ち上がり迎えるのが礼儀だが、誰一人席を立とうとする者はいない。メンデルがしきたり等の堅苦しさを嫌うからだ。 着席したメンデルは足をテーブルに投げ出し、相変わらずPDAを操作している。 「ボクに構わないで始めちゃってー。今いいとこだからさ。」 「はい。では、始めます。」と、アイザックが立ち上がった。 「まずは、先日の黎明軍侵攻の件ですが、ハワード隊長、報告ありますか?」 アイザックに問い掛けられたハワードは腕組みをしたままぶっきらぼうに答えた。 「いや、なんもねーな。問題なく撃退したぜ。」 「そんなことありません!」 私は異論を挟み立ち上がった。そして、まくしたてるように発言した。 「黎明軍はスキル系職業で軍を固め、地形効果を相殺したんですよ! 撃退したのではなく、向こうが――。」 ハワードの太い拳が私の側腹部にめり込んだ。呼吸が止まり私はうずくまった。 「テメェ、なにしてんだよっ!」 凛子さんの叫ぶ声が聞こえる。 「あんっ? 他所の隊のことに口出すんじゃねーよ。」 「んだとコラッ!?」 「やめろって、凛子。」 両者が言い争う中、口を開いたのは国王メンデルだった。 「なになに、どうした? 喧嘩? 戦(や)るの? いいよ、早く戦ってみせてよ!」 私はどうにか息を吸い込み顔をあげた。 「り、凛子さん、これはウチの隊の問題ですから。」 「で、でもよ。」 私は凛子さんに向けて首を左右に振り、アイザックへと向き直った。 「会議を続けて下さい。」
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