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「なーんだ。」と、つまらそうにPDAへと視線を落とす国王をアイザックは一瞥し続けた。
「地形効果を相殺とはどういうことです?」
隣に座るハワードがチッっと舌打ちをした。
「黎明側は戦略を練る軍師が変わったようで、軍を攻撃隊と地形効果のみを相殺する隊とに分けて攻めてきました。」
顎髭をさすりながらろんぎぬす隊長が口を挟んだ。
「新しい軍師? ということは安倍晴明は指揮官を降ろされたってわけね。あいつも相当厄介だったけどねぇ。」
「はい。指揮をしていた人物を探索機器で探ったところ"佐藤哲二"というプレイヤー名が判明しました。」
「えっ!?」と小さかったが驚きの声を出したのは直樹さんだった。
探索機器が拾ったから私には聞こえたが、他には誰も気がついていない。もしかしたら、あ……そうだ。蓮さんが以前言っていた、哲二という名に聞き覚えがある。
「どうしました? ルセテ続けて。」
アイザックは訝しげに私を見ている。
「あ、はい。一年前にもボガードのオーラ型防衛機器に地形効果を攻略されておりますし、今回の件もまた別の形で攻略されていますので、何か対策を講じたほうがよいのではないかと。」
「対策とは、例えば?」
「それは……。えっと、こちらから攻めていくとか……。」
ゲームが終了したのかメンデルはPDAから顔を上げ発言した。
「いやー、今のまんまでいいんじゃないの。攻めていくほうが危険でしょ。うち宝具ないしさ。いざとなったら龍王の洞窟に逃げ込めば軍隊なんて追ってこれないしね。」
やはり、この男は国を守ろうという考えなどない。軍隊が追えない場所に非戦闘員が入れるはずがない。メンデルは思ったとおり、自分のことしか考えられない人間なんだ。
「し、しかし――」
「それよりさー。キミ、問題あるね。」
食い下がる私の言葉を殺気混じったオーラで遮り、メンデルはニヤリと笑った。
「同じ隊で仲良くないのは問題だからさ、二人で決着つけてよ。そうだな、んー、じゃあ三日後に闘技場でどうかな。」
「えっ、ちょ、ちょっと待って下さいっ!」
「くっ、くははははっ!」
ハワードは声を出して笑い始めた。
そして、メンデルが再びPDAを横持ちしゲームの世界へと没頭していったのを確認したアイザックは会議の終了を皆へと告げた。
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