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そんなことは決まっていた。
この世界に来てから蓮さんが一番に望んだことは、仲間と会うこと。
彼に貰ったこの生命で私がすることは、それを手助けすることだ。
「ポルン様、私も協力します。ボガードにお戻りになられたら西条様にお伝え下さい。」
『いやー、それがよー……。』と、ポルンは途端に歯切れが悪くなった。
「どうされました?」
『戻れなくて困ってんだよ。』
「えぇ!? だって、どこにでも侵入できるんじゃないんですか!?」
『この国に侵入した後によ、回線が切られちまったんだ。流石にオフラインじゃあ飛んでくことも出来なくて。まっ、どうせ三日後には美咲がこの国に来るんだから問題ねーよ。気楽にいこーぜ。』
「そ、そんな適当な……。」
画面に映るポルンはどこから持ってきたのか、ちゃぶ台を組み立て徳利で一杯やり始めている。宝具が協力してくれると言っているのに、私はなぜだか不安でたまらなかった。
どう声を掛けていいものかヤキモキしていると、誰かがドアをノックした。
「おーい。ルセテ大丈夫か?」
凛子さんだ。心配して来てくれたんだ。
そそくさとドアへ向かう私にポルンが言う。
『俺様のことは誰にも"ショナイ"だぜ?』
仲間に秘密を作ることに後ろめたさを感じたが、私は小さく「はい」と頷きドアを開いた。ドアが開ききるよりも早く凛子さんは体を滑らせ中へと入ってくる。
「本当にやんのかよ? なんならウチが代わってやるぜ?」
「そういうわけにはいきませんよ。でも、心配しないで下さい。私にも勝算がありますから。」
「えっ、マジかよ。でもよ……。」
稽古をつけてくれる凛子さんは当然、私の実力も、三日月宗近のことも知っている。だからこそ、どこに勝算なんてあるのかと思っているのだろう。
勝算はないが、三日後のハワードとの戦闘も行われない可能性が高いと言えないことがもどかしかった。
「少しでも強くなりたいので、稽古お願いできますか?」
「当たり前だろっ! よし、ウチが絶対勝てるようにしてやるから今から行くぞっ!」
「えっ、今からですか!?」
聞こえていないのか、凛子さんは返事もせずにドアを開け、ずんずんと屯所出口へと向かっていった。
稽古はありがたいが、もう少しポルンから情報を聞き出したいし、三日後の対策を練りたい気持ちもあったが、ここは凛子さんの好意を受け入れることにした。
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