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まだ日は明るく、一般の訓練所は隊員達で混雑しているので、幹部専用の施設へと向かった。すると、施設前にろんぎぬす隊長の姿が見えた。
どうやらPDAで会話しているらしい。これ以上、注視すると私の携帯型探索機器が音声を拾ってしまうので視線をそらした。
だが、珍しい。ろんぎぬす隊長といえばほとんどの時間を龍王の洞窟で過ごしている。いつもなら国王会議の後、すぐに洞窟へと戻るのに。
『ん。なんだ、あいつ……。』
と、いきなりポルンが発言した。
「龍王警備隊の隊長です。」
『そういうことじゃねーよ。ふーん。なるほどな。』
ポルンは一人で納得しているようだが、これ以上話しかけると独り言を呟いているようにみられると思い私は何も言わなかった。
そして、ろんぎぬす隊長を発見した凛子さんの歩く速度がさらに上がった。
「お前、何してんだよ。」
いくら同格の役職とはいえ、歳も、隊長になった期間もろんぎぬす隊長のほうが圧倒的に上だが、凛子さんはお構いなしに突っかかっていく。
声をかけられ細い目をさらに細くしたろんぎぬす隊長は、PDAを懐にしまいつつ、腕をそのまま組むようにして着物の中に入れた。
「凛子ちゃんこそ。真面目に稽古かい?」
「だったらどうだっていうんだよっ!」
ここまで凛子さんが喧嘩腰になる理由が私にも少しわかる。ろんぎぬす隊長の物腰は柔らかいのだが、思考が読みづらい。その包み込まれてしまうような雰囲気に私は怖さを感じていた。
「やっぱり怒った顔がキミには似合うね。」
なんだと、と言いかけた凛子さんにろんぎぬす隊長がかぶせた。
「三日後に向けての特訓ってところだね。ボクも見学させてよ。」
と、すたすたと幹部専用施設へと向かっていった。
「お、おい。ちょ……。」
凛子さんが後を追うので私も続いた。
施設へと入り受付にPDAをかざすと、空間に訓練闘技場の選択肢が浮き上がった。既にろんぎぬす隊長は4番の訓練闘技場に入室している。
横に立つ凛子さんと目が合うと、彼女は頷き消えていった。不安はあるが私も4番を選択した。
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