ルセテの目的

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ぼんやりと視界が徐々に狭くなり、仮想空間へと転送されていく。 罠だとしても、訓練闘技場であればHPバー残量が固定されるので殺されることはない。疑うわけではないが、勝手に洞窟へと侵入した蓮さんの件もあるので用心に越したことはないだろう。 先に転送されていたろんぎぬす隊長は、テニスコート程の大きさの闘技場脇に立っておりわざとらしく「よっこらしょ。」と、呟きながら腰掛けた。 ハワード側なのか、中立なのか、それとも他に目的があるのかわからないが、私の太刀筋がみられたところで問題はない。むしろ、凛子さんの手の内を明かしてしまうことの方が気にはなるが、私程度に凛子さんも本気は出さないだろう。 私は左腰に下がる九十五式軍刀の鯉口を切った。既に凛子さんは、赤い刀身の名刀――菊一文字則宗を引き抜き構えている。 「時間ねーからな。スパルタでいくぜっ!」 と、凛子さんが言った直後、私の探索機器に様々な情報が書き加えられた。さらに彼女が動き出す刹那、その攻撃軌道がモニターに映し出される。 その御蔭で私は上段突きを回避し、さらにそこからの切り上げ、胴切りの連続攻撃を紙一重でかわすことが出来た。 「お、お前ルセテ!?」 これは一体――。モニター画面右下では横になりくつろいでいるポルンの姿があった。私の視線を感じたのか、片目を閉じ何度もウィンクしている。少し悪寒が走った。 まさか、これも宝具の力? 【ホワイト・ブースター】発動。 凛子さんの体を白いオーラが覆い始めた。 【デス・チャージ】発動。 黒いオーラが私の腕や武器に染み込んでいく。同じく基礎数値上昇系のスキルだが、一定期間HPが減っていくというリスクがある分、数値上昇率が高い。 「これはどうだっ!!」 加速した凛子さんは、上段の構えからの打ち下ろし。私はそれを受け流し、喉元と腹部を狙った二段突きを放つ。 ――が、高速で動く凛子さんの残像を貫いただけで手応えはない。私は追撃を逃れる為、右方向へと転がり込んだ。 『今だっ! 魔弾撃てっ!』 ポルンの叫びと同時にモニターには魔弾を打つ場所の指示が表示された。何もない空間だが私は指示に従った。 【魔弾】発動。 左手を前に出し、何もない地面へと青白い炎に包まれた岩石を放った。 すると、高速移動していた凛子さんがフェイントの為か、偶然私が放った場所へと飛び込んだ。
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