ルセテの目的

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私の放った魔弾はドンピシャのタイミングで凛子さんの腹部へと直撃した。地面を擦過しながら転がる凛子さんだったが、その勢いを利用しくるりと起き上がった。 「てんめぇ……。」 もちろん、私の魔弾程度では大したダメージは与えてはいないが、それでもクリティカルにヒットしたので直情型の凛子さんが怒るのも無理はない。 頭に血が登った凛子さんだったが、すぐには突っ込んではこず、正中中段に構えたまま、切っ先をゆらゆらとさせ近づいてくる。 静から動へ。獣のような動きで凛子さんが間合いを詰めてきた。 『やばいっ、下がれ! 後に飛べっ!!』 「う、後にって……。」 後方へ飛ぶことに一瞬、躊躇(ちゅうちょ)してしまった。意を決して後に飛ぼうとした時には、赤い刀身が私の腹部、鳩尾、喉元を貫いていた。 「あっ、やば、すまんっ!」 倒れた私に凛子さんが駆け寄ってきた。 頭上のHPバーを確認するが残り10%で残存している。ここでは10%以下にはならないように設定されているので、訓練場でなければ死んでいただろう。 宝具の力は確かに素晴らしいが、隊長クラスと戦うにはまだ早いということを痛感した。 「おい、ルセテ、大丈夫か?」 呆けた私の顔を凛子さんが覗き込む。青い髪が私の頬を擦るほど近い。 「だ、大丈夫です。ちょっと驚いただけで……。」 私が上体を起こすと、離れた位置で立ち上がろうとするろんぎぬす隊長が視界に入った。隊長は、拍手をしながら近づいてくる。 「想像以上にやるねぇ、ルセテちゃん。久しぶりに驚いたな。」 まずい。宝具の力も、凛子さんの本気の三段突きまで見られてしまった。 「たまたま今回は上手くいっただけですから。」 私は誤魔化しながら立ち上がる。 「ふーん。たまたまねぇ……。じゃあさ、ボクと一勝負してみるか。」 「えっ……。」と、戸惑う私の頭越しに凛子さんが答えた。 「おお、いいねー! ルセテやってやれよ」 この人は何も考えていない。ノリと勢いだけで生きている。ポルンの事を言えないことがもどかしかった。
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