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結局、ろんぎぬす隊長と手合わせしなくてはならなくなった私は、水分を補給したいと言って少し離れPDAを操作した。そして、具現化したスポーツドリンクを飲みながら小声で呟いた。
「次からは力を使わなくていいですから。」
『なんでだよ。あのおっさんに一泡吹かせようぜ。』
「なるべく能力を見せたくないんです。」
『おめーの能力じゃねーだろ!』
「そ、それはそうですけど……。」
と、ポルンと押し問答していると、待っていられない性格の凛子さんが私を急かす。
「どうした、どうした! ビビってんじゃねーぞっ!」
彼女には駆け引きとか作戦とかはないのだろうか。隊長職をこなしていることが不思議でならない。
開始位置に立った私は軍刀を引き抜いた。
ろんぎぬす隊長も、何もない空間に手を伸ばし見慣れない大刀を取り出した。青龍刀のようにやや曲がっている。そしてなにより目につくのが西洋の悪魔を模した装飾だ。間違いなくレア度の高い名刀。
そして、モニターにはその詳細がすぐに表示された。
■魔剣グラム★7
北欧神話に出てくる剣のひとつ。噴出する地獄の炎を自由に操れる。
絶大な破壊力を誇り、その一撃を★5以下の武器で受け止めることは不可能。短期間で大幅に体力を消耗するため常人では1分と手にしていられない。
アイテムレア度★7を容易く検索する機能なんて私の携帯型探索機器にはない。ポルンの力だ。
さらにデータが書き加えられた。
■ろんぎぬす(Lv.652)
◇職業
服部半蔵(★7)
◇装備
魔剣グラム(★7)
魔鏡の盾(★8)
江戸小紋の着流し(★6)
龍王の指輪(★9)
◇スキル
【多重分身】【金剛夜叉明王】【神脚】【龍王の爪】
こ、こんなにレア装備を……。
想像の遙か上だった。龍王の洞窟攻略により他の隊長よりもレア装備を多く持っているかもしれないとは予想していたが、ここまでレア装備で固めているとは。
「さぁ、遊ぼうか。」
ろんぎぬす隊長は足元からペールグリーンのオーラを立ち昇らせ始めた。
「いいの? その武器壊れちゃうよ。勿体ぶらずに使ったら? 」
「えっ? な、何をですか?」
強い殺気が私に向けられた。
「三日月宗近だよ。」
なぜ、それを知っているの。
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