ルセテの目的

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信じられないことに、ろんぎぬす隊長のオーラがさらに色濃く増した。なぜ三日月宗近の事を知っているの。まずい。やはり罠だった。この人は目的があってここにいるんだ。 「それで、いいんだね?」 「待って――」 十中八九罠だと思うし、ここでは殺されることがないと頭では理解しているのに、耐え難い重圧に負けた私は九十五式軍刀から三日月宗近に装備を変更してしまった。 途端に新しく握り直した柄頭から強い力が流れてくる。 そして、ろんぎぬす隊長は細い目をさらに細くしニヤリと笑った。 『来るぞっ!!』 モニターに下段から掬い上げるような攻撃軌道が映し出された。私はその軌道に合わせ蓮さんから借り受けた名刀を差し出した。 すると、予備動作など一切感じ取れていなかったにもかかわらず、一瞬で私の眼前に着流しの江戸小紋が現れる。次いで、手にする三日月宗近から伝わる強い衝撃。 予め攻撃軌道で受け止めた筈だったが、軽々と刀ごと腕をかちあげられ、私自身もブーツの踵を地面にこするようにして数mもノックバックされてしまった。 まだ隊長は強化スキルすら発動していないのにと驚く私だったが、ろんぎぬす隊長もまた私の反応速度に驚愕していた。 「相当目がいいのかい? それとも反射神経が――いや、ボクが動くより先に動いていたよねぇ。じゃあ、これはどうかな。」 ろんぎぬす隊長は魔剣グラムを鞘へと戻し、左手で自身の右手首を掴んだ。すると、右の人差し指に装備されたレア度★9の指輪が輝き出す。 オーラを注ぎ込まれた指輪は、禍々しい雰囲気を増幅し続けた。間違いなくスキル攻撃だ。 「ルセテッ、今のうちに攻撃しちまえっ!」 『どうにかしねーと、これやべーぞっ!』 二人がアドバイスをくれるが私はその場を動くことはしなかった。 半分は恐怖から、もう半分はこの攻撃を吸収しようと思ったからだ。 三日月宗近の特殊能力はスキルの吸収と放出。現在最大で20のメモリがあるが、受け渡された時から【木火土金水】というスキルが2メモリ使用しチャージされていた。残存18メモリならばどんな強さの攻撃も吸収できるはず。 【龍王の爪】発動。 ろんぎぬす隊長の右腕が赤い鱗で覆われた竜族の腕に変化していく。さらに、その背後には一本一本がカラフルに装飾された巨大な鋭い爪が浮かび上がった。 私は三日月宗近を鞘に収め居合斬りのように構えた。
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