ルセテの目的

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凛子さんや直樹さんがろんぎぬす隊長に話すことはありえない、かといって龍王の洞窟深層にいるであろう蓮さんが――あっ、もしかして、龍王の洞窟!? そうだ。ろんぎぬす隊長は龍王警備隊の隊長だ。蓮さんと出会った可能性がないこともない。いや、でもそれでは時系列的にユナ副隊長が蓮さんを見逃し洞窟へと導いたことへの説明がつかない。 ふと足元をみると凛子さんが仰向けでいびき声をあげ寝ていた。その横に私はそっと腰を下ろした。 事実だけを並べると、ろんぎぬす隊長は切り札である三日月宗近を私が所有していることを知っていた。そして、強力なスキルである【龍王の爪】を私は吸収した。 三日月宗近というレア武器を持っているという事実が仮にハワードに伝わったということを差し引いても、私にとってこの強大なスキルを吸収できたことは大きなプラスだ。 やはり蓮さんが何かしてくれたのかもしれない、というのは私の都合の良い考えなのだろうか。 今となっては、三日後のハワードとの戦いは行われない可能性が高いが、宝具ポルンの力、三日月宗近、そして、スキル【龍王の爪】があれば――。 ポルンからボガード侵攻の話を聞いてどこかでホッとしている自分がいた。侵攻の混乱でハワードとの戦闘が有耶無耶になるからだ。 だが、それではいけない。 そうだ。 私の目的はハワードを殺し沿岸警備隊の長となり、少しでも蓮さんの助けとなること。 三日も待つ必要はない。 戦るなら今、この時――。 私は立ち上がり、スーツに付着した砂埃を手で払った。そして、右側頭部に手をやる。 「ポルン様、お願いがあります。」 モニターに映るポルンは顔を上にし口を大きく開け、逆さまにした徳利から落ちる最後の一滴を味わっていたが、それを放り出し私に笑顔を向けてくれた。 『いいぜ。みーんな俺様を頼るんだよ。』 私は凛子さんを起こし訓練所を後にした。
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