ルセテの目的

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―― 2 ―― 「で?」 龍王は巨大な台座に腰掛け左肘をテーブルにつき太い拳で頬杖をついている。 ボスクラスであるデーモンとの戦闘中にいきなり召喚されたので状況がまだ把握できていない。俺とアルトは正座しながら頭を下げた。とりあえず。 「で?」 「す、すいません。あの、何で怒られているのか理由がわかりません。」 「へぇー。わからないんだ。凄いねお前。龍王との契約忘れちゃうなんてさー。」 「そんなことないです。ちゃんとアイク師団長には――。」 「死んだ人間にどうやって会うっつーんだよっ!! それも一年前によっ!!」 ぶるんぶるんと頬震わせながらボルテクスは叫んだ。 どういうことだ。アイクという人物は美咲が所属している師団の長だったはず。一年前といえば美咲に召喚された時――。 「美咲は、西条美咲はどうなってますか?」 「んなことアタシが知るかよっ! それにアンタさ、その時ボガードに行ってたわよね。ねぇ、行ったわよねっ!? アタシに黙ってさっ!!」 「そ、それは急に召喚されて。」 「言い訳してんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!」 怒鳴る声が突風となって吹き抜けた。以前だったらその風圧だけで壁まで転がされていただろう。修行の成果は出ているようだ。 「こっちはな、忙しい中色々調べてんだよ。全部ゲロっちまえって。」 これは尋問か。 「あの時は急に召喚されて、目の前にいたボガード隊を率いる隊長格と戦闘になったんですけど、俺はベイリンの剣を装備していたので記憶が曖昧で……。」 「ちっ、使えねーなっ!」 あの呪われた剣を装備すると呪い自体は精神力で跳ね除けられるが、極度の興奮状態になる。無差別にキスしてしまうのだけは勘弁して欲しい。 「あの、そろそろ鬼丸を返してくれませんかね。」 「イヤよ。この赤い爪は"オキニ"なんだから。その黒い剣が嫌なら転職すりゃーいーじゃねーか。もう一本名刀渡しただろーが。」 刀を装備できるレア職業の転職の書は確かに手に入れた。だが、戦える強い刀がない。 ボルテクスから借りたもう一振りの刀はレア度は高いが特殊武器で戦闘には不向きだったので、俺は剣しか装備できないソードブレイカーの職から変更できないでいた。
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