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必死にそのことを説明したが、すでに話に飽きたボルテクスは山のように盛られた果実をもしゃもしゃと食べ始めていた。これ以上は無理と判断し話を変える。
「それで、今回召喚されたのは俺から情報を得る為ですか?」
「なーんも得られなかったけどな。」
「すいません……。」
「はぁ。アイク様との合コンがブチ壊されて、誰でもいいからブチ転がしたい気分だわー。」
いい流れではない。なんとかしなくてはと思っているところへ、転送の魔法陣が出現した。俺贔屓な無龍イグナレオンであってくれという淡い期待はすぐに裏切られた。
立ち上る紫色のオーラから現れたのは、忍び装束姿の女性。一年前俺がまったく歯が立たなかった龍王警備隊の副隊長ユナだった。
俺は即座に立ち上がり背に手を伸ばしベイリンの剣を掴んだ。途端に心拍数が上がっていく。
「童貞野郎がいっちょ前に殺気出してんじゃねーよ。」
ボルテクスが俺を睨みつけたので、柄頭から手を離した。そして、転送されたユナは俺を素通りし、ボルテクスの前で立膝を付き頭を下げた。
「龍王様、報告に参りました。」
「またお前か。ろんぎぬす君はこねーのか?」
ろんぎぬす、君?
君付けか。色男には弱いボルテクスらしいが、少し気持ち悪いな。
「はい。隊長はこの後すぐに深層へと潜りますので。」
「あら、残念ね。まっ、300階より下は難易度が倍になるからしゃーねーか。」
「300階まで行ったんですか!?」
「うるせーな、話入ってくんなよ。」
200階に飛ばされた俺とアルトが一年掛かりでやっと280階まで攻略したのに。龍王警備隊の最高到達階数130階というのは嘘の報告だったのか。
二人のやり取りで少し見えてきた。龍王警備隊は早い段階で龍王と出会ってその配下になっているんだ。
「外は特に変わったことねーの?」
「はい。特には問題ありません。先日、黎明が攻めてきましたが深く侵攻せず退却していきました。」
「んだよ。つまんねーな。早く地形効果攻略してこの国ぐちゃぐちゃにしてくんねーかな。」
「後は、特別報告することもありませんが、沿岸警備隊のハワードと副隊長のルセテが対決するくらいですか。」
「ルセテがっ!?」
と、発声した瞬間に巨大な爪が目の前に現れた。俺はすかさずベイリンの剣を引き抜きデコピンを受け止める。
「話、入ってくんなっつったろーがっ!!!!」
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