ルセテの目的

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「そ、そうだ! 俺はルセテにレア度★7の三日月宗近を渡してある。敵のスキルを吸収して放出する特殊能力があるんだけど、それならどう?」 ユナは横を向いたまま答えた。 「95回。」 「95回……勝つ?」 「負ける。」 俺の質問には随分とぶっきら棒に答えるな。 「戦う前に何か強力なスキルでも吸収したらどう?」 「ルセテに協力する幹部がいない。」 「凛子は――駄目か。強化系と治癒系スキルしか使えないし。なら、直樹さんのサイクロプスの指輪は?」 「無理。」 「じゃあ、どうしたら勝てると思います?」 「……。」 まったく協力してくれないなこの人。 それでも、形を変え諦めず質問を続けていると岩竜との話が一段落したのか龍王が話し掛けてきた。 「なによ。そのルセテって奴はアンタの"ナオン"なの?」 「ナオンとは……。」 「お前のオンナかって聞いてんだよっ!」 「ちちち、違いますよ。」 「オンナじゃねーのか。じゃあ、なんでそんなにムキになんだよ。」 「仲間なんだから当たり前ですよ。」 「はん。相変わらず童貞臭漂わせやがって。じゃあよ、アンタそいつを救う為なら何でもすんのか?」 「もちろんです。」 「へぇー……。」 ボルテクスは、皿から一つ大きな果実を掴みしゃくりと噛んだ。俺を見つめたまま口をゆっくりと動かす。もしゃもしゃと咀嚼しながら俺を見下すように見続けた。非常に辛い寡黙な時間が流れている。 「よし、わかった。おい、ユナ。アタシももうこんな場所飽きたからよ、洞窟出ることにするわ。」 「そ、それは駄目です、龍王様。計画とは違います。」 ここにきて初めてユナの動揺が見て取れた。 「お前らの計画なんて知らねーよ。ろんぎぬす君とは利害が一致したから組んだだけだしよ。」 「おい、お前ら。今すぐドラゴラン攻め込んでこい。」 お前ら、とはまさか。 アルトは難しい会話についていけずさっきから呑気にゲームなどしているが、今、龍王と視線が合っているのは俺だ。
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