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「えっと……それはちょっと無理では。」
「テメェ、たった今何でもするっつったろーがよっ!!!!」
口に入った果実が散弾のように飛んできた。かなりの数が被弾したが気持ち悪いだけでダメージはない。
「む、無理ですって。」
「なんだとコノヤロー! 何のために強い武器取り上げてわざわざ深層まで送ってやったと思ってんでだっ! こっちはな、万年コマ不足――」
「龍王様っ!!!!」
「あっ……。」
龍王はど派手なスカルプが並ぶ爪を自分の口元へと持っていった。
「あーそうだよ。全部アタシの為よ。もう嫌なのよっ、こんなジメジメした暗い場所っ!!」
開き直りやがった。
それにしても、これ程の強さを誇る龍王を、宝具もないこの国の王メンデルはどうやって封印したのだろうか。
「メンデルはそんなに強いんですか?」
「あん? お前、アタシを煽ってんのか? いー根性してんな。」
「いえ、違いますよ。だって、ドラゴランは国の規模はそんなに大きくないっていうし宝具もないのにどうしてボル……龍王様を封印できたのかなと。」
龍王はふんっと鼻を鳴らした。
「屠竜(とりゅう)だよ。忌々しいあの武器さえなけりゃあ100万回ぶち転がしてやんのによ。」
「屠竜、ですか。」
ボルテクスがまた果物を食べ始めたのでユナが代わりに説明してくれた。
「竜族にのみ力を発揮する剣だ。別名のドラゴンスレイヤーといったほうが有名かもな。通常でも強い武器だが、竜族との戦闘時には全てのステータスが10倍になる。」
「10倍!?」
「だから、お前達がやんだよ。」
「いやいやいや。無理ですって。」
「こっから城まで走って城門破って闘技場まで行ってアタシを召喚するだけの簡単なお仕事だからよ。あとはアタシと一緒に存分に暴れまわりゃーいいわよ。ってことで、今すぐ頼むわ。なっ? なっ?」
龍王は眼光鋭く強烈な殺気を放っている。
反論したらまた怒鳴るだろうか。いや、それで済むはずはないか……。ここで殺さるならいっそ言うことをきいてドラゴラン王国に攻めるしかない、と心が折れかけていた俺だがユナは負けなかった。
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