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ハワードは肥前忠広を肩に担ぐようにしたまま私に向かって歩いてきた。そして20m程の距離で立ち止まった。私は構わず進んでいく。
「そんなに死に急いでどうすんだよ。」
探っている。誰が見ても格下の私が三日後の対決を早める道理などない。ハワードの内心は穏やかではないはずだ。
「嫌なことは先に済ますタイプですから。」
私は腰を落とし、左腰に下がる三日月宗近の鞘と柄を掴んだ。
【デス・チャージ】発動。
暗黒のオーラが拡散し斑点のように私の腕や武器に染み込んでいく。それを見た観客席は戦闘開始の合図と受け取り爆発でも起きたかのように沸いた。
「見慣れねぇ得物だな。それに居合か……。まぁいい、死ねよ。」
【鏡心明智流】発動。
【暗歩】発動。
ハワードの全身をライトブルーのオーラが包み込んだ。
見た目こそは筋骨隆々のタンク型だが、ハワードの戦い方はスマートでシンプル。私の知っている限りでは剣の達人の技法を落とし込み戦うスタイルだ。
「ポルン様……。」
『わーってるって!』
私のモニターにハワードの行動予測が映し出された。と、同時に奴も動き出す。速い。
右上段からの打ち下ろしを受け流しつつ、ハワードの右側面へと回り込む。そして、そこからの私の切り上げをハワードは上体を反らしただけで回避した。
「なるほど、そこそこやるじゃねーか。」
右からの横切りがモニターに映し出されたので対応しようと得物を構える。が、構えた三日月宗近には手応えがなく、腹部に痛烈な一撃を入れられ後方へと転がった。
『あの野郎、ルセテの動きを見て一瞬で攻撃軌道を切り替えやがった。』
スピードが桁違いだ。
私は立ち上がり、最初と同じ様に居合抜きの構えをした。この武器に収められたスキルを発動するには一度鞘に戻さなくてはならないという制限があるからだ。
「つまんねー戦いすっと"国王様"がキレるからよ。もうちょい頑張れや。」
ハワードがゆっくりとした歩調で間合いを詰めてくる。
私は三日月宗近を引き抜き能力を開放した。
【木火土金水】発動。
赤、青、黄、黒、白といった五色のオーラが混ざり合い完成された漆黒のオーラが私の体を包み込んだ。
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