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「ノロマなお前の突きなんぞ喰らうかよっ!!」
ハワードは三日月宗近の切っ先を強く弾き、お返しとばかりに私の胸元を一突き。
まずい、これは避けられない――。
苦し紛れに上体を強く捻ると胸に焼けるような痛みが走った。
今のは間違いなく致命傷だった。スキル【木火土金水】のお陰で胸の皮一枚切っただけで済んだが……ううん、違う。考え方を変えよう。
このスキルは思っている以上に強い。そうだ。それを利用して、いや、でも――。
閃いてしまった危険な作戦に恐怖が付きまとう。でもやる。私は逃げない。
「おー、ネーチャン。今度は色仕掛けか? 胸が大きくはだけてるぜ。意外とあんじゃねーか。」
服ごと切られた為、私の胸の上半分近くは露出している。だが、今更そんなことで動揺するわけがない。私は視線をそらすこと無くハワードを睨み続けた。
「ふん、つまらねーな。まぁいい。もう終いにしよーや!」
奴と共に私も動き出す。白濁したオーラがハワードから立ち昇る。スキル攻撃だ。
【打ち首獄門】発――。
が、しかし。形成されつつあったスキルが、小さい粒子となって四方へと霧散していった。
「て、てめぇ、何しやがったっ!」
私はポルンが何かしてくれたんだとすぐに理解した。
オーラ型兵器は会場にはもうない。だが、ポルンが発動させたのは、この私の携帯型探索機器のようなオーラを原動力とした種々のアイテム。オーラを吸収する対象をハワードに指定したんだ。一つ一つの吸収力は微少でもこれだけの人数だ。ハワードのスキルポイントはあっと言う間に枯渇しただろう。
『ったくよ。どいつもこいつも、ホント俺様の仲間は無茶ばかりして言うこと聞かねーんだ。ほれ、ルセテ、奴ぁスキル無しだ。さっさとガチンコで勝負つけちまえっ!』
「ポルン様っ!」
嬉しかった。助けて貰ったことよりも、蓮さんの仲間が私を仲間として認めてくれたことに。私は強く、強く三日月宗近の柄を握りしめた。
「行くぞ、ハワードっ!」
「こ、この野郎。何様だっ!」
私は名刀を振り上げ飛び込んだ。狙いは上段からの袈裟斬り。モニター画像は私のガラ空きの胴体を狙った横切りだった。
奴の懐深く踏み込み斬りつけた。あえて強く踏み込みハワードの持つ刀の根本で自らの胴体を斬らせた。
強い痛みと衝撃。肋骨は間違いなく折れているはず。それでも、私の力の乗った一撃が初めてハワードを斬り裂いた。
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