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私の作戦は相打ち。奴の肋骨を折った感触はあったが斬り裂いたのは精々真皮程度だ。
ポルンが声を荒げた。
『おいっ、お前は【デス・チャージ】で体力が減り続けているんだぞっ! もう無理だ。一撃入れたんだからいいだろ? さっさと【龍王の爪】使っちまえよっ!』
私は肩で息をしながら首を横に振った。
そして、鬼のような形相で私を睨むハワードは左肩を押さえながら回復アイテム使用している。私も同じくPDAから回復薬を取り出した。
「て、てめぇ……。」
「ふふふ。無様ですね。」
私は敢えてハワードを挑発した。
「なんだと……。」
「だって今、ノロマな私と互角じゃないですか。」
「いい気になるなよ。どっから手にいれたか知らねーが、そのレア装備さえなきゃテメーなんて――。」
「それが無様だと言っているんですよっ!!」
私は一気に奴の間合いへと入り右上段から大きく斜めに斬りつけた。ハワードは手にしていた回復アイテムを投げ捨て、片手一本での横殴りで応戦。
再び相打ちとなったが、先程以上の激痛が走った。やはりこの防御スキルも万能ではない。攻撃を受ける度に防御力が落ちている。
そして、私もハワードもすぐに立ち上がり回復薬を使った。
「こ、この世界はレア装備を手にしたものが優位に立てます。だから、レア装備を手にした者はクリアを目指さなければならないんです。そ、それを貴方は放棄したどころか、弱者をいたぶった。そんな人間が上に立ってはいけないんですっ!」
相打ちを誘う挑発のはずが、いつの間にか今までの鬱積した想いが溢れ出し自分でも止められない。
「それのどこがわりーんだ。力があるもんが上に立つに決まってんだろっ!」
「違いますっ! 弱者を導ける者が上に立つべきなんですっ! 私はずっと弱者だった。だからこそ弱者の気持ちが痛いほどわかる。弱い者を踏みつけていないと立っていられないような人間達にもう国を任せていられない。私はこの貰った命を賭け貴方を倒し必ずこの国を変えてみせるっ!!」
私が蓮さんに救ってもらったように、私も私と同じ様に苦しむ弱者を救ってあげたい。
自分の想いが、自分の目標が、自分自身で口にして今初めてわかった。
私にも成すべきことがあったんだ。
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