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「てめぇみてーなノロマが国を変えるだと? ふざけんなっ!」
「貴方のような器の小さい男には理解できないわっ!」
三度目のぶつかり合い。私の放った右からの胴切りがヒットし刃が腹部に喰い込んだ。
「ぐっ、ぐ、おらぁぁぁぁ!!」
ハワードは痛みを堪え右上段に得物を振り上げた。そして、硬い腹筋に阻まれ振り抜くことが出来ない私の左肩部に肥前忠広が打ち下ろされる。
耐えられる、はず。
「ッ――――。」
パキリと乾いた音が体内に響くと同時に痺れを伴う痛みが走った。鎖骨を折られたんだ。咄嗟に頭上を見上げるとHPバーの残量は僅か数%だった。
上を見上げたことで周囲に意識がいった。耳をつんざくような大歓声が会場を支配している。その大半が"ルセテ、ルセテ"と、私の名前を叫んでいた。
再びハワードが肥前忠広を構えたので私は後方へと距離を取った。
「偉そうに講釈垂れたが、もうそろそろ終わりの時間だろ。俺とお前じゃあ最大HPが違うもんな。」
「そのようですね。」
「来いよ。ほれ相打ち狙いなんだろ?」
私はゆっくりと三日月宗近を鞘に収め居合抜きの構えを取った。
「相打ち? 違いますよ。」
「あん? ふかしてんじゃねーぞっ!!」
私はハワードを一瞥し、ゆっくりと三日月宗近の濃口を切った。すると、澄んだ音色と共に刀身から乳白色のオーラが流れ出し辺りに充満し始めていく。
【ホワイトウォーター】発動。
煙幕のように張り巡らされたオーラが私を包み込み、HPを大幅に回復、さらに傷口を塞ぎ体力までも回復させた。
これはレベルアップした凛子さんの上位回復スキル。試しに戦闘前に発動してもらって吸収したんだ。
「これでHP残量は私のほうが上になりましたよ。」
私は両手で柄を握り締め構えた。
「ハワードさん、終わりにしましょう。」
「ふざけんじゃねぇ! お前ごときに俺が――」
「さっさと掛かってこいっ!! このノロマがっ!」
「てめぇ!!!!」
「私はこの国を救うっ!!」
ハワードは肥前忠広を正中上段に大きく振り上げた。私は三日月宗近の柄を握りしめる。
「それが蓮さんから救ってもらった私の責務だっ!!」
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