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―― 1 ――
真横に引かれたミステリアスブラックの閃光がスノーワームの腹部を斬り裂くと暗緑色の液体がどしゃりと飛び散った。
俺は朦朧とする意識の中、雪原を走った。黒い剣をしまいつつ丘を超えた辺りで、遠くからの警報音が聞こえるようになってきた。流石に早いな。
「アルト、下りの雪原は足元に微少なオーラを集めてスキーのような感覚で滑るんだ。」
「んだば。」
以前、ルセテに教えてもらった要領をアルトに伝え坂道を滑走した。アルトはピッタリと後ろにくっついてくる。
前から思っていたが、アルトのセンスというか物事の吸収力には目を見張るものがある。なんだかんだ言いながらも龍王の洞窟を潜り抜けてもいるわけだし。
「そろそろ、来るぞ。連続で戦闘になるだろうから俺はアドバイスできなくなる。作戦通り頼む。」
「んだば。んだばとも、蓮さ、頼むがらキスさしねーでくれよ。」
「そ、それはベイリンの剣に言ってくれ。」
坂道を下りきり再び大きな丘を登ろうとした時、六つの人影が現れた。
「オラがいぐ。蓮さはまだ剣さ抜かんでけろ。」
「六人だぞっ!? 危険じゃないか。」
「黒い剣さ抜いた蓮さんよりは危険でねぇど。オラはもうこれ以上汚れだぐねぇ!」
そんなに嫌がらなくても。いやしかし、よく考えたらアルトはまだ中学三年。ここがゲームの世界で良かったと少し思ってしまう。
俺は何も悪くないと自分に言い聞かせていると、アルトが前へと飛び出した。
見上げれば前衛職らしき三人が雪原を滑り降りてくる。残る三人は銃器を構えていた。
アルトは矢筒から三本の矢を取り出し、前方から迫る三人に矢を放った。俺も同時に左手に溜め込んだオーラを遠くへと投げつける。
【ファイヤードラゴン】召喚。
後方の銃器を構える三人の前に、蛇型のドラゴンが出現し炎のブレスを吐き出した。
アルトが放った矢は、一人目の心臓を貫き、二人目は矢を武器で弾いたが、その瞬間矢が爆発し男を吹き飛ばした。
「アルトッ、そいつは――」
「んばさだよー!」
相変わらず何を言っているのか理解できない。
三人目は粘度の高そうなオーラでアルトの矢を包み込み爆発を抑え込んだ。そしてそのままアルトへと急接近。さらに俺が召喚したドラゴンは時間稼ぎにしかならず、撃破した後衛達の照準はアルトへと向けられていた。
俺は背にするベイリンの剣の柄を掴んだ。
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