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【愛染明王】発動。
アルトの背後に巨大な愛染明王の石像が出現。屹立し弓を引くその像が放った矢というよりはあまりにも太いレーザー光線が雨雲へと向かっていく。
【メガフレア】発動。
左腕を天へと掲げると、ひび割れるように広がった黒い空間からメタリックに輝く翼を広げたバハムートが出現した。その裂けた顎には高密度のエネルギー弾が形成されている。
その銀龍がメガフレアを吐き出すと同時に、雨雲から極太の稲妻が落ちてきた。
愛染明王が放った光線と稲妻が衝突するが光線は一瞬にして飲み込まれ、次いで放った銀龍の咆哮もその威力を半減させることしか出来なかった。
「嘘だろっ!!」
【岩竜】発動。
俺はアルトに覆いかぶさった。その上に岩竜の尻尾がとぐろを巻くようにしてガードする。激しい雷音、そして大地が揺れる程の激震が俺たちを襲った。
痛すぎる。
俺は岩の鱗をどかしながら外へと顔を出した。
「し、死んだかと思ったっぺよー。」
アルトは破片で白くなった髪を振り払いながら弓を拾った。
「ここでやられたら笑えないぞ。」
「んだば。」
いやでも、実際今のはやばかった。龍王の楯の光が届く範囲を広げ俺だけではなくアルトまで覆ったのでどうにか耐えたが、もう一度きたら無理かもしれない。
「急ごう。もう城は見えているよ。」
城壁付近に見える大砲が動きこちらに照準を合わせている。
左右から出現したスノーワームをアルトが撃破する横を通り抜け、城門へと向かう。
すると、ドーン、ドーンと砲弾が一斉に発射された。
「援護頼む。」
「んだばっ!」
砲弾の雨を掻い潜ろうと走り込んだが、城壁から放たれた砲弾は全て俺を飛び越して着弾した。
ならば好都合と門前へと足を運び、門を破壊すべくオーラを貯めた。
【メガフレア】発――。
左腕を掲げようとした時、観音開きの城門がぎいいと音を立ててゆっくりと開き出した。
俺は右手を背に回しベイリンの柄を掴み引き抜いた。ぐにゃりと意識が混濁していく。夢と現実の狭間のような状態の中で、聞き覚えのある声が頭に響いた。
「侵入者、鷹山蓮およびアルトを捕捉っ!! 総員待機っ!! 私が捻じ伏せますっ!!」
この声は、ルセテ……か?
俺の記憶は途切れた。
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