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私は力強く上段から打ち下ろした。
「ほんと、お願いしますよっ!」
蓮さんはそれを錆びれた剣で受け止める。
「す、すまん。俺もどうにもできなくて。」
「どうにかしてくださいっ!」
横殴りの強振。さらに切り上げ、蹴りを放つ。
「ちょ、危ないって。」
「意識混濁って本当ですか? 信じられませんけど。」
「本当なんだってば。」
アルトちゃんとのキスが終わった蓮さんは黒い剣を落とし元に戻った。そして今は私が渡した剣で戦うフリをしながら闘技場に近づいている。
一年ぶりの再会。私の成長を蓮さんに見てもらいたかったのに。
まさかあんな……。
思い出すだけで膝が笑い頭がぼーっとなる。
「ちょ、ちょっと、演技にしては殺気が多くないか?」
「そんなことありませんよっ! 私が強くなったんですっ!」
一通り作戦は説明してあるので、あとは私が蓮さんを競技場方面へと吹き飛ばせばいいだけ。
だけど……。
「それにしても驚いたよ。まさかルセテがこんなに強くなっているなんてさ。」
【魔弾】発動。
右手一本で三日月宗近で斬りつけ、回避したところへ炎に包まれた弾を撃ち込んだ。
「な、何を言っているんですか。そ、そんな、誤魔化したってダメです。」
いつだって蓮さんは私が欲しい言葉をくれる。成長した私に気がついてくれている。
それだけで十分で、お礼すら言いたいのに……。
「とにかく、その剣の呪いをなんとかして下さい。精神力が弱いから跳ね返せないんじゃないんですか?」
先程うけた行為が頭にチラつき、つい強い口調になってしまう。
「そ、そうなんだろうけど。凄い力なんだよこれ。」
「まったくもう。お願いしますよ。」
私と蓮さんを結ぶ直線上に闘技場が見えたので、腰を落とし居合切りの構えを取った。
【サイクロプスの右腕】発動。
三日月宗近の濃口を切ると私の背後に巨大な腕が出現した。半透明なその腕は私を超え、ミサイルのように蓮さんに向けて飛んでいく。
蓮さんは左腕を前に出し、龍王の楯の光を全身へと巡らせた。
私の役目はあと一つ。
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