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呪文のような入れ墨がびっしりと彫られた巨大な腕が、真っ直ぐと蓮さんへ向かっていった。防御力の高い彼なら問題ない。このまま街を破壊しながら闘技場へと蓮さんを吹き飛ばす。
だが――。
巨大な腕の前に一人の男が割って入った。
男は完全に具現化されたサイクロプスの腕を手にするロングソードだけで易々と受け止めた。
「オ、オルカ副隊長……。」
「こいつに聞きたい事があってな。」
国王警備隊のオルカ副隊長だ。
「待って下さい。今、彼は私と戦闘中ですっ!」
「彼? 随分と知った風じゃないか。」
「いや、それは……。」
オルカ副隊長から溢れるオーラはハワードのそれを軽く超えていた。立場上、隊長となった私のほうが役職は上だが、実力は遙かに向こうが上だ。
蓮さんも一度会っているので、その実力を知っているのだろう。あ、そう言えばあの時、オルカ副隊長に異常なまでに反応していたような気もする。
K遺伝子がどうのこうって……。
――!!!?
逃げると思っていた蓮さんが、漆黒のオーラを爆発的に上昇させベイリンの剣を引き抜いた。オルカ副隊長も直ぐ様、七星剣と言われる得物を引き抜く。
「質問するだけだって言ってんだろっ!」
まずい。戦闘になってしまう。
【バハムート】召喚。
【岩竜】召喚。
蓮さんの頭上に銀の翼を広げた翼竜が出現し、その背後には岩のように巨大な鱗を生やしたドラゴンが出現した。
凄い。同時にこんな巨大な竜を二頭も。
蓮さんは二頭の竜を従え、ベイリンの剣先で地面を擦りながら滑走する。対するオルカ副隊長は厭わしいといった目つきで武器を構えた。
さらに、後方で様子をみていたアルトちゃんが弓を放った。
【ホーミングアロー】発動。
三本同時かつ三連射で放たれた九本の矢が多方向からオルカ副隊長に襲いかかった。
オルカ副隊長は矢には一切気を取られず青い髪をなびかせ疾走する。その背後から次々と矢が飛び込むが、身体に触れる前に蒸発するように全て消えていった。
正面から走り込んできた蓮さんと衝突する。
私はまだどの立ち位置で接すればよいか迷い動けずにいたが、おそらくそういう状況ではなくとも、両者の戦闘に入り込む余地はなかった。
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