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「龍王の洞窟に宝具はあったか?」
「ほ、宝具? そんなの知らない。」
「本当か?」
「宝具があったら今使っているだろ。」
オルカ副隊長は疑っているのか、極めている腕を離そうとはしなかった。私が口を挟む。
「宝具はこの国にはありません。最も近くにあるのはボガードのレッドストーンです。」
「そんな事は万人が知っている。それこそ、あれを奪うのは宝具なしでは無理だ。」
「ち、違います。ボガードにはもう一つ宝具が――。」
「ルセテッ!!!!」
蓮さんが私の名を叫ぶが、私は構わずまくしたてるように続けた。
「西条美咲が所有する宝具ホワイトインベーダーがあります。能力は全ての電子機器へのアクセスと強制支配。そして、この宝具には人格があります。さらに――」
「ルセテッ!!!!」
再び蓮さんが叫ぶ姿を見てオルカ副隊長は腕を離した。
私は三日月宗近の柄を強く引き絞った。
「俺はもうこの国に用はない。後は好きにしたらいい。」
私はオルカ副隊長を警戒しつつ、蓮さんに近づき回復チケットを手渡した。
「宝具を探してどうするんですか?」
「強くなるために決まっているだろ。このゲームを楽しみクリアするのは俺だ。お前の望みと近いように思うが? まっ、俺は自分が楽しいと思ったことしかしない主義なんでね。この混乱に紛れて国を出る。せいぜい派手に頑張ってくれ。」
「あっ、待って下さい。蓮さんの罠は一体どうなっているんですか?」
行きかけたオルカ副隊長は口元を覆っていたマスクを少しずらし面倒くさそうに答えた。
「使用すると重量が数十倍になる罠と催淫系の罠の二つがその剣に仕掛けられてるだけだ。中級クラスの簡易トラップアイテムだろ。解除アイテムもネットショップで手軽に購入できる。龍王にまんまと騙されたな。」
「あっ――。」
これ以上はごめんだとばかりにオルカ副隊長は両足にオレンジ色のオーラを発生させ、大きく飛び上がり城壁へと着地。さらにそこから飛び上がり城外へと消えていった。
私は振り返り、うつむき加減で蓮さんを見上げる。
「あ、あの、蓮さん、すいません。西条美咲さんの情報を教えてしまって。」
蓮さんは、回復アイテムを使用しながら息を整えていたが、頭を下げる私に首を横に振って笑顔を見せてくれた。
『ルセテお前が謝ることはねーぜ。言わせたのは俺様の指示だからなっ!』
と、ポルンは私の携帯型探索機器から発声した。
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