13677人が本棚に入れています
本棚に追加
私の先を行く男が立ち止まる。
「早くしろよっ、ノロマッ!! ったく使えねー"女"だ」
強い衝撃と共に左肩口に痛みが走った。
私は蹴り飛ばされぬよう両足に力をいれるが、雪仕様ではないロングブーツを履いてきてしまった為、踏ん張りが効かない。
「す、すいません……」
よろけながらも、こめかみ部分に装備された片側だけしか耳にかからない眼鏡のような機器に手を当て、捜索範囲を詳細から広域へと広げた。
レンズ越しの視界いっぱいに張り巡らされていた格子状のラインが赤い点を捉える。
侵入者を示すその光は点滅を繰り返しながら左から右やや上方へと流れていった。
「は、発見しました。左です、左側の森林地帯を北東へ進んでます。きょ、距離は210……215……は、速いです!」
「来たぜぇ、俺達超ラッキーじゃね。他の班が見つける前に狩っちまうぞっ!!」
私を蹴った男、殺神(ころがみ)は細身のブレードを背中から抜き、ノコギリの様に歯がびっしりと刻まれた刃をひらひらと動かした。
「おいおい、興奮しすぎて殺すなよ」
振り向くと、後から追い付いてきた迷彩服の男が立っていた。卑屈な笑みを浮かべ前方を見やっている。
にたぁと笑う殺神。
「さぁ、どうだろうな。ここんとこ溜まってるもんでよ」
嫌悪しか抱かないその表情に私の皮膚が粟立った。
「殺しちまったらポイント貰えないんだぞ。まっ、微々たるもんだけどよ。せめて登録だけはしねーと」
「わかってるって。大事な"領民様"にはなってもらわねーとな」
「じゃあ、俺が足止めするからさっさと行け」
「OK。ミスって俺を撃つなよ、REXXX(レックス)」
ぐるりと首を傾けた殺神が狂気に満ちた視線を送る。
迷彩服の袖をまくりながらREXXXが応えた。
「はんっ、それは、お前の日頃の行い次第じゃねーの?」
「そりゃやべーだろっ!! ケツの穴が2つになっちまうぜ!」
殺神はげらげらと下品に笑いながらゆるやかな斜面を駆け降りた。
最初のコメントを投稿しよう!