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奴らの思考はいつだって同じ。職業のレア度が最優先だ。
いかに強くなって名を馳せるかが重要で★2以下の職業に就いたプレイヤーを人とすら思っていない節がある。
★1の私など論外だ。
魔剣士といういかにも強そうな名前だがレア度は★1。スキルも【チャージ】と【魔弾】を覚えて以来、いっこうに増える気配はない。
それでも、たいていの非戦闘系職業に比べれば、体力も腕力もある為、補助兵士として戦場に駆り出される。
雑音混じりに無線状態にしていたPDAからまた別の男の声が流れた。
『遅れてすまねー。俺は今、殺神の逆サイドから対象に接近中。指示を頼む』
この声はニークだ。
REXXXが砲身を構えたまま、すぐに応答する。
『おいおい、マス掻いてる場合じゃねーぞ! 獲物はもうすぐそこだぜ』
会話の邪魔をしないよう、タイミングを見計らってPDAへと口を開く。
『こ、殺神さん、そのまま前進すれば十五秒後に対象と遭遇します。ニークさんは、北上して下さい。30秒、いえ、27秒後に遭遇……グツッ――』
突然、大腿部に強い衝撃を受け、転倒。衝いた手のひらに新雪に埋もれた小石がいくつも喰い込んだ。
「余計なこと言ってんじゃねー。俺らが久々の獲物で遊んでんのがわかんねーのかよ。ったく、察しねー女だ」
そう言い放ったREXXXは手にする武器にオーラを注いだ。
私は力なく頭を垂れた。小石ごとギュッと握った拳を胸の前に当てる。
この弱い心はそろそろ限界を迎えているようだ。
彼らに虐げられる日々。まだ小学生の弟や妹を養わなくてはいけない重圧。
全てを投げ出したい。
いっそのことこのまま侵入者に殺され死んでしまいたい。
そうすれば、戦死扱いとなり高額の遺族年金が弟達に入る。もちろん二人は私を失った悲しみで辛い日々を送かもしれない、だが、時が経つにつれその悲しみは薄れていくだろう。
私と違って弱い二人ではないから。
戦闘中に死ねば、弟達が成長するに十分な金額が与えられる。
――誰か殺して。
いつの日か、これが私の願いになっていた。
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