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喜びも束の間。目の前の切断したはずのエミール副師団長は陽炎のようにゆらゆらと消えていった。
「後ろですっ!!」
私が出す指示よりも早く蓮さんは反応している。彼の背後にエミール副師団長は姿を現していた。
敵は既に攻撃態勢に入っており、振り上げた戟を右側から左へと薙ぐ。
蓮さんが半回転した勢いのまま鬼丸で向かってくる戟を打ち付けると、ぶつかり合った得物が火焔の華を咲かせた。
私のモニターは驚愕したエミール副師団長の表情を捉えている。
恐らく蓮さんがレア度★2職業でレア装備を所持しているという情報は敵側の能力者に割り出されていることだろう。
よもや★7職業が打ち負けるとは誰もが思っていなかったはず。当の本人は尚更だ。
打ち負けたエミール副師団長の戟が外後方へと流れると白銀の鎧がさらけ出された。追撃体勢に入っている蓮さんの狙いはもちろんそこだ。
★7職業に打ち勝つほどの蓮さんの重い一撃が右上段から敵の胸元へ。
【アブソリュートバリア】発動。
攻撃がヒットする瞬間。半透明の青い球体が敵エミール副師団長をすっぽりと包み込むように出現した。
中にいる白銀の騎士は時が止まったかのように微動だにしない。そこへ鬼丸が食い込んでいく。
いかなる防御スキルでも漆黒のオーラが乗ったこの得物の一撃を受けとめられはしないだろう。私の気持ちが微かに緩む。
だが、予想に反し強振した日本刀は青い球体に弾かれた。
反動がそのまま蓮さんへと伝わった。
靴底で雪面を激しく擦りながら蓮さんが数m後退した所で青い球体が破裂。一転して攻守が入れ替わる。
【ホーリーランス】発動。
エミール副師団長が投擲のごとく戟を振りかざすと、後方に白く巨大な槍が出現した。
「逃げてっっ!!」
膝をついた体勢の蓮さんは回避不可と判断し、鬼丸を横に構え防御態勢に。
と、同時に白く巨大な槍が穿たれた。
無我夢中で私は走った。
雪原に突き刺さる槍が大地を裂いた場所へと。
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