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その赤く大きな月に、刀を振り上げた何者かのシルエットが重なる。
いつのまにか右目のモニターには新たな情報が書き加えられていた。
Name:Ren Takayama――
自らが放つクリムゾン色のオーラによって照らし出された栗色の髪が、風になびき後方へと流れている。顔にはまだあどけなさが残っている青年だった。
彼が殺神とニークを?
私の泳ぐ視線に気がついたREXXXが振り返る。
「なっ、テメェ、まだ――」
【グレネード弾】発動。
言うやいなや、奴は右手一本で持った砲身を捕捉対象へと向け、グレネード弾を発射した。弾体が砲身を蹴り上げた反動が私にまで伝わってくる。
「死ねぇぇぇぇ!」
加速する弾体が刀を振り上げガラ空きとなった侵入者の胸元へと直撃。REXXXは掴んでいた私の喉元を離した。ドサッと地面に落とされた私の耳にはびゅんと大きな風切音が入ってくる。
咳き込みながら見上げた視界の中で、驚いたことに、至近距離からまともにグレネード弾を受けた男が何事もなく日本刀を振り下ろしていた。
刹那の間を置いて、REXXXの上半身が斜めにズレていく。吹き出す鮮血はすぐに半透明となって体ごと消えていった。
強い。本当にレア度★2なの……。
切った本人は、周囲を確認しながらPDAを取り出している。倒したREXXXを回収する気だ。
次は私?
ついに願いが叶う時がきた。
早く、早く私を殺して。
瞳を閉じると弟達の笑顔が浮かぶ。ザッザッと地面を擦るような足音が近づいてくる。
覚悟を決め、私は地面に座ったまま顎を上げ首を差し出した。
「……大丈夫?」
どこか懐かしいような温もりのある声。
ゆっくりと瞳を開くと、目の前には手が差し伸べられていた。
「え……」
動揺する私の眼前にその手がずいっとさらに迫ってきた。
「ほら」
自然とその手を掴むと、ぎゅうっと握り返される。さらにそのまま力強く腕を引かれ私は立ち上がった。
「俺の名前は蓮。鷹山蓮。君は?」
蓮と名乗った制服のブレザーを着た青年は、屈託の無い笑顔を向けてきた。気がつけば涙滴が私の頬を伝っている。
「……ケイ」
なぜだか私はハンネではなく、本名を名乗った。
この時から――
私の本当の願いが叶い始めたんだ。
【Kill Time 3】
Lento.
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