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「はあ、何でまたこういう事になるんだ……」
俺、槙田久はそう言って、ため息をつく。すると近くにいた同僚の関根寛とほぼ1週間前に偶然知り合い、今回も何故か捜査に乱入してきた加納由紀が俺を睨むと、
「おい久、今は犯人捜ししてるところだ。お前も関係者ならきちんと捜査に協力しろ」
「そうよ久。今回もあんたが事件に関わったんだからあんたが解決するべきよ」
「好き勝手言ってくれる……。第一寛は良いが、由紀は無関係の一般人だろ。捜査に入ってくるな」
すると由紀はいいじゃない!と言って腰に手を置きこちらに膨れ面を向けると、
「今回の事件は私の力が必要よ。何せ女性ばかりが被害者なんだから、あんたたち男だけでは捜査が進まないわ!」
「むちゃくちゃだな……。女性刑事もいるし、何もお前が危ないことに首を突っ込まなくても」
「そんな気遣いは無用よ、私だって覚悟ぐらいはしてきてるんだし。……でも心配してくれるのは、その、嬉しいけど」
「ん?なんだって?」
何でもない!と言うと由紀はそっぽを向いてしまう。まったく、年頃の女性はよく分からん。寛も寛でやれやれという顔をしているし。
「すみません、ちょっと時間が掛かって、……皆さんどうかしましたか?」
若い刑事が申し訳なさそうにこちらに近づいてくると、俺たちの顔を見比べて心配の表情を浮かべる。どうやら言い争いでもしたんじゃないかと思っているのだろうか。
「いや、大丈夫だ。で、どうだった?」
「あ、はい。久さんの言った通りまとめてみましたら、やはりここ渋谷のスクランブル交差点周辺ばかりで、さらに被害者に”あの事”を聞いたところ、全員がそうだったと言ってました」
彼の言葉に俺はそうか……と言うと、
「……やはりそうだったか。となると後は犯人がこちらの餌に食いついてくれるかだが……」
「上手くいきますかね?」
「まだ分からない、その上犯人が本当に単独とはわからないしな。ここからは待つ、待って相手の動きを探るだけさ」
そう言って俺は人ごみに目を向ける。その視線はある一点に向いていた。
ここで少し時間を遡ろう。昨日、この事態に巻き込まれる数時間前だ。
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