4、群盲評象

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正直な感想、ものすごく怖かったとだけ言っておこう。まあきちんと答えたからいいが、嘘を言ったらどうなっていたのか。 「いやぁ、あれが噂の氷の女だったのか……」 「怒らせたらどうなっていたか……。しかしあれは何だったんだろうな?」 「さあな。……でもお前だけならまだしも、なぜ俺も一緒なんだろうか?俺よりお前の方がそういうのに出くわしてると思うのだが」 確かにな、と俺が返す。そうだ、何故寛も話を聞かれたのか。俺は分かる、今まで数件の事件に関わってきた。まあ数件でもかなり異常だが。 探偵や暗殺者など裏の世界に生きる人間や、妖怪や謎の怪現象。もう相当な”世界の闇”を見てきた俺だが、寛の方はあくまでそれの一部しか知らない。それも社会的に公表されていることばかりだ。 (俺の近くにいる寛が何か知っているから、というのは考えにくいか。何せあいつは無関係の事ばかりだしな。それに第3係の警部がわざわざ取り調べを行うのも、どうも不自然だ。他に行うべき所、……例えば公安部とかな) と、俺がそんな事を考えていると目の前に1人の男が立ちふさがる。寛がゲッと言う声を上げ、俺もその男の顔を見て顔を曇らせる。しかし男はそんな俺たちの反応を見てハッハッハと笑うと、 「相変わらず嫌われてるのな、俺。ったく同期なんだし顔見知りなんだから仲良くしようぜ」 「てめえみたいなイケメンドS野郎とは、知り合いである事すら嫌なんだがな」 「そう言うなよ寛。……お前さん、疲れてるな。警部に絞られたか」 なっ!という顔をする寛にニヤリと笑って見せる男。当たったみたいだなと言わんばかりの顔、どうやら既にこの情報を仕入れてきて俺たちを揺さぶるのに使うらしい。まったく、この男らしいといえばらしいのだが。 彼、木村唯滋(ただしげ)は俺たちの同期であり刑事である。所属は公安部である事以外は不明であり、担当も不明。そのくせ情報収集力は高く、署内の情報をすぐさま掴みそれを自分の武器にする、まさしく策士だ。だが彼が特に悪く言われないのはその容姿だろう。 少し長い茶色の髪、黒い瞳に垂れ気味の目は優しげな雰囲気でパッと見ホストか何かにしか見えない。しかし署内の女性から圧倒的な人気があり、その上普段は礼儀正しいので幹部からも評価はいい。 よく寛は彼を”キツネ野郎”と呼ぶが、それがよく合う男である。
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