運命の日

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「馬車を止めろッ!!」 「ッ……お、お父さん……!?」 言葉の途中で口を噤(つぐ)んだ父を訝しく思い、どうしたのかと尋ねた次の瞬間、父は突然大きな声を出して御者に馬を止めさせた。 シャインは馬車から慌てて外に飛び出す。辺りを見回して夕日の方を向くと、血の気が引く様な顔をして目を見開いた。 「何だ……あれ………」 「…….…お父さん?」 父に倣い、シェリアも馬車を降りて同じ方向を向いて空を見上げる。 そして、シェリアも同じ様にして目を見開いた。 「────え?」 空に浮かぶ夕日の下部を塗りつぶすように、“大量の黒い何か”が蠢(うごめ)いていた。シェリアはそれを見て唖然としてしまう。 「ディン!直ちにシェリアを屋敷に帰せ!俺はこの足でギルドに向かう!」 「ハッ!」 「え!お父さん……!?」 「お嬢様!此方へ!」 走り去って行く父に驚き声をかけられるも、馬の手綱を持っていた御者によってシェリアは馬車の中に押し込められる。 動揺も束の間、馬車は勢い良く車輪を回し始め、シェリアは屋敷へと向かわされる。 慌てて窓から顔を出して父の姿を探すが、既にその姿は無くなっていた。 ───────────── 「陛下。」 「何じゃ藪から棒に、急ぎか。」 「それが………」 一人の衛兵が会議室に入り、周りの目も気にせずに一直線にアデルの元に向かった。兵隊長を介さない伝言に皆は首を傾げて様子を窺っている。 「………何じゃと。」 「是非とも御身の目でお確かめ頂けませんか。」 「分かった。皆の者、外へ出るのじゃ。」 二人の冷静な態度に混乱は起こらない。だがこれは指導の下このような方針とされているのであって、その顔からは焦燥感が滲み出ている。 「魔物が来るやもしれぬ。」 『ッ……!!』 各兵隊長を筆頭に皆が会議室を早足で飛び出す。その後ろをアデルとゼノン、ヨハンは続いた。侍女や執事が不思議そうな目でその集団を眺めている。
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