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「ど、どうしたの……?」
「………ハハ、マズいなこりゃ。」
冷や汗を伝せながらずっと同じ方向を見つめているカイル。セラには彼がいったい何の事を言っているのかが分からなかった。
………が、その正体は直ぐに明らかになった。
「………手を挙げろ、後ろを向いて膝を付け。」
「なッ……!?」
突如向けられた数多のボウガン。木の葉や枝を身体中に張り付け、景色と一体化していた十数人の男達。
「どうしてこんな街の近くにっ……!」
「ククク、此処はもう“街の近く”じゃなくなっているのさ……もはやキャンベルは向こう半分しか残っちゃいねぇ!」
「そ、そんな………」
この男達もキャンベルを襲った魔物の群れに遭遇していた。しかし彼等は小都市の外壁の外の森に潜伏していたため、住民達とは反対方向に避難していたのだ。
事情も分からずにその場で待機し、ほとぼりが冷めた頃にキャンベルの様子を窺いに行くと、其処は少数の弱い魔物が屯す無人の場所になっていた。
魔物の残党を葬り、すっかり廃屋と化した近くの建物を占領すると、高い位置からキャンベルの遠くの様子が窺えた。
大量の蠢く黒い影、飛び交う攻撃魔法。
男達は、自分達が先程倒した魔物の群れがこの小都市を現在進行系で襲っているのだという事に気が付いた。
勢力は人間の方が勝っているのか、ほとんどの魔物が前線に密集し、今自分達がいるキャンベルの南門付近は両手で数えられる程度の魔物しか見当たらない。
此処で動かない手はないと踏んだ一団は周辺を荒探りした。
其処で見付けたのだ、逃げ遅れた住民達が固まって身を潜めていた大衆講堂を。
男達はその住民達を人質に周辺を占領。小都市の南門からやって来る客がいるかもしれないと踏み、林に姿を溶け込ませて見張っていたのだ。
「その制服は王立学園のものか……こりゃ生きの良いのが来たもんだぜぇ。」
「非常事態に付け込んで……腐ってるわ!」
「お、おい!あまり刺激するような事を言うな……!」
怒りを露わにするセラ。あまりに不利な状況に脅えているカイルが小声で宥める。
それに対し、男達は愉しそうに下卑た笑みを浮かべていた。
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