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「くっ……!いま───」
「アホか捕まりてぇのか!早く行け!!」
「っ……!」
発煙筒の発する煙の中から幾つもの捕縛魔法が飛び出している。盗賊団ががむしゃらに放っているのだろう。此処で手を拱(こまね)いていては直ぐに捕まってしまう。
「早く行け!俺なら大丈夫だ!」
「くっ……!ごめんなさい!!」
身を翻し、セラは捕縛魔法の飛来する場所を避けて林の中へと飛び込む。カイルの行動を無駄にしないように、後ろを振り返らないように、セラは木々の隙間を一心不乱に駆け抜けて行った。
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「ギルド《キャンベル》支部長、ムーランじゃ。」
「並びに、現在この都市の衛兵の指揮権を任されています。エコー・ヒューズです。此度は北方の村より遥々支援に来ていただき、感謝しています。」
戌(いぬ)の刻。
疲れを残したままキャンベルに通され、俺達一行は市民会館へと案内された。普段は展示物等の記念館としても機能していたため中はとても広く、避難場所としては打って付けだったようだ。
双方の自己紹介が終えたところで、話は本題に入る。
「先ず、皆さんはヤルタ村へと向かったフェリックの支援要請によってこのキャンベルまで赴きました。
しかし──いざ辿り着いてみると、話にあった魔物の姿は何処にも無く不思議に思ったと思います。」
「あ、ああ……一体これはどういう事になっているのだ?治安と秩序を取り戻したようには思えないのだが………」
「ええ……実は───」
キャンベル支部長であるムーラン殿と、衛兵筆頭のエコー殿によってそれは語られた。それは、単に悪を成敗する目的でやって来た俺達の顔を顰めさせるものだった。
「盗賊団に───街を占領された?」
「ああ……不甲斐ないものじゃ。」
二人の口から語られた真実はこうだった。
魔物の群れと衝突するキャンベルの戦士達は少しずつ数を捌いて行き、最終的には撃退する形で危機を乗り越えたそうだ。
避難民の中には旅行者や貴族も居たようだが、その中にはライゼンバーグからキャンベルのギルド支部に通信機器を運搬しに赴いた一団も居たらしい。
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