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平和を取り戻したと安心した束の間の事だった。
キャンベルの東街区のギルド支部に通信機器を設置しようと向かった数名のギルド員、及び南街区の住宅地へと逃げ遅れた人々の生存者を探索しに向かった十数名の衛兵が謎の集団に襲撃されたそうだ。
彼らは全員を無力化し、人質として捕らえた。衛兵の一人が脅迫文を手に持たされ、解放されて緊急避難特区の敷かれたこの場所へと戻って来た。
驚いたエコー殿がキャンベルの上層部と共にその文を開くと、この様な事が書かれていたそうだ。
『王国の闇───《キャンベル》の上層部に告ぐ。
ギルド員及び従国兵、並びに《キャンベル》の一般市民を解放して欲しくば、“情報都市”たるに相応しい宝を我々に提供せよ。』
その文章の下には、さらにこう綴られていたそうだ。
『────《緋の騎士》』
一見たった一人の仕業と捉えられる名だが、俺達はその名を聞いて直ぐに敵が盗賊団という事に気付いた。
「《緋の騎士》ッ……!国際指名手配の大型盗賊団ではないか!」
「………」
《緋の騎士》───世界中の貧困者の不満を形にした巨大な指定盗賊団だ。本隊と幾つもの中隊を有し、各国に分散して活動しているという。
緋(あか)は旧ゴードリアス帝国の象徴色だ。スローラル王国の象徴色が青金である事と同じ。
その事から……彼らの頭はかつての皇帝に連なる者ではないかと噂されている。 いずれにせよ、大犯罪者である事は確かだ。
「マジかよ……大胆な事をしてんなと思ったが、まあ国際指名手配犯ならおかしくはねぇわな。」
「……………………こいつらとは大違いだな。」
「おう聞こえたぞエドワード。なあもう一回言ってみ?怒らないから。」
「黙ってろ。」
「おう。」
普段は余計なところで口を挟まないジョットだったが、どうやら野盗としての自分達にプチっと潰したくなるくらいの誇りは持っていたようだ。
直ぐに矛を収めるところを見ると、この例えは言い得て妙だったかもしれない。
「───『“情報都市”たるに相応しい宝』か……言うまでもなく情報の事だろう。それも秘匿事項を要求している様に思える。」
「ああ、犯罪組織が欲しがるものと言えば……情報の在り処とそこに辿り着くための鍵、及び自分達の素性と言ったところか。」
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