キャンベル解放作戦

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「え?自分達の素性?」 「《緋の騎士》について国が所有する情報だ。何処まで自分達の事を知られているかが分かるだけでも犯罪者はかなり動き易くなるものだ。」 「彼らにとっては自分の手札を明確にできる、もっとも、この国の状況においてはそれすらも困難だと言えますが。」 「《緋の騎士》も恐らく同胞との連絡が途絶えているはずだ。すなわちキャンベルの南街区を占領している奴らは独立した一個中隊に過ぎない……勝機はきっと何処かにあるはずだ。」 疑問を浮かべたジェムに対し、俺、エコー殿、ライアン殿と説明を続けた。巨大組織とは言え、奴らが分散して活動している以上、キャンベルを占領する彼らはただの小組織だ。油断はならないが、《緋の騎士》そのものを相手にするというよりは意味が変わって来るだろう。 「時間制限を設けていないのは……成る程な。」 「表の世界で食糧供給に難が生じている状況だ、このまま長期間キャンベルに居座り、占領している家屋で腹を満たすつもりか。」 「………下郎が。」 静かな怒りの声が各所で呟かれた。 しかし盗賊団とはそういうものだ。奴らに議論は通用しない。向こうがそのつもりならば、此方も理不尽な手段で出し抜かなければならない。 「そして……こちらをご覧ください。これが私達の現在の戦力の名簿となります。」 「これは………」 「黒線で潰されている者は負傷者、赤線は人質として捉えられた者たちじゃ。」 渡されたバインダーに綴じられている名簿を見ると、戦士である人々の名前の羅列と、その横に所属機関の名称が記されている。見る限りでは、塗り潰されている線が目立っている。 「ぜ、全体の半分が機能していないのか……」 「面目無い限りじゃ……平和な時代には滅多に無い多数の敵、大勢の護衛対象という巨大な負担……彼らの多くは期待に潰された者ばかりじゃ。」 「勇敢なる戦士達だな……」 ライアン殿を筆頭に流石に落胆を隠せない。それこそ残りの人数は一個中隊程度と言えよう。奴らに勝るか、それとも劣るか、分かったものではない。 「“情報”を渡したところで……人質の部分的解放などと抜かしてこのまま居座るだろうな……」 「………」 俺の発した言葉に誰もが閉口した。 失言だったかもしれない。心なしかジェムが俺の方を目を細くして見ている気がする。 大切じゃないだろうか、現実。
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