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「非礼は謝るがな……それでも予め教えてくれていればこうはならなかったぞ?」
「だってっ……ジョットがまだ教えるなって……!」
「………なに?」
結論から言おう。ジェムは女だった。
どうりで16歳にしては肩幅の小さい奴だとは思っていた。中性的な顔立ちならまだしも、一人称や少年くさい冒険家のような格好、平たい胸、ボウガンという渋い得物、趣味……様々な要素が重なって勝手に男だと思い込んでいた。
確かに俺は本人やジョット達から“ジェムは男だ”などと明言されていない、勝手に俺が男と思い込んでいたのだ。
しかし、ジェムは明らかに自分の正体を隠すために男を装わされていたように思える。女性向きの動き易い格好を繕う事もできたはずだ。そして、ジョットはまだ俺にこの真実を伝えるつもりはなかった……。
「そうか……」
「………?」
一般人ならともかく、彼らは懸命なサバイバルによって此処に在る存在だ。生活していく上で“女”という肩書きは大きな脅威となる可能性が大いにある。
どうやら俺はこの宿に至るまでまだ信用されていなかったようだ。
ジョットは俺があの時ジェムの居る湯浴び場手前の脱衣所に立ち入る事を止めなかった。つまり、信用を得たと考えて良いのだろうか。
……いや、止めてくれ別の意味で。
「お前は……体型に恵まれたんだな。」
「うわあああ思い出すなああああ………え、恵まれてる?何処が?」
「悪い思い出せない。」
「ちょっ……」
成り行きでリーダーになっているのだと考えるのはどうやら無礼だったようだ。飄々とした男だと思っていたが、それなりに考えている事はあるらしい。このような隠し事をされていたとは思ってもいなかった。
「まだやってんのか?次入れよ。」
「うげぇ!?下着姿で出て来ないでよロッソ!」
「………」
同感だ。見苦しい姿に俺も一言物言いたかったが、どうやらそれどころではないようだ。
あ、脚が動かない……。
ロッソが湯浴び場から出てきた?つまり俺は長時間正座をしていたという事か。どうりでさっきから痺れのしの字も感じなくなっていると思った。
「あれ、エドどうしたの?」
「あ、いや………」
「うす、ただいまっと………ん?おお?」
その後、俺はこの三人によって貴族らしからぬ声を上げる事になった。
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