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「迷いは無いようだな。」
「状況が状況だしな。一先ず仮って事で。」
「まあ、止むを得ないか。」
答えを出そうにも出せないだろう。ジョット達も何かきっかけが無いと動く事ができまい。
まだ暫くは共に行動する事になるようだ。
身体を翻して私事を捨て、当支部の長であるムーラン殿に顔を向ける。
「何か協力をしたい。ギルドはどう動くんだ?」
「当分は情報を集めながら哨戒(しょうかい)を繰り返して近隣の村々の支援になるはずじゃ。急を要する支援を求められても第三波の恐れがある限り東ノズラルド州からは抜け出せん。」
「そうか……ライアン殿はどうするんだ?ヤルタ村は……」
「悔しいが……《キャンベル》の戦力の事を考えると優先度は此方にある。私達が居なくなれば両方が滅ぶ可能性があるからだ。」
「《グラディアル》が開いておればのう……」
『………』
皆が顔を顰めた。ムーラン殿は年長者だからこそ遠慮無く言えるだろうが、もはやその言葉は禁句に等しい。
南の都市は国際ギルド連盟の総本山だけあって王国の戦力の八割近くが固まっている。そもそも南方は厄介な魔物が多いのだ。己を高めるために赴く者は多い。
現在は一切の情報が無い。分かるのは、第一波から延々と戦い続けているという事だけだ。
話が戻されない事から、俺が此処まで来る間も同じ内容の事を話していたようだ。ライアン殿達ヤルタ村のギルド員は帰還の支度まで整えていたらしい。同情を禁じ得ない。
いや、本当に同情を禁じ得ないのはヤルタ村のギルド員達だ。ビリー支部長の苦悶に満ちた顔が目に浮かぶ。
さらに話を進めて行くと、どうやらアデル国王陛下の指示が無い以上は国の為に別の州まで足を延ばす事が出来ないそうだ。
「……そうか。」
「お主はハンターだったか。欲しいのは移動する理由じゃろうが、すまないの……」
「いや、気にする必要は無い。俺自身がどうにかする事だ。」
ギルドは俺の利害と一致する活動をしない。だが、通信機を持つ以上は協力関係を維持しても損は無いだろう。いつ新たな情報が手に入るか分からない。
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