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「それは私が普通の貴族じゃないって言いたいのかしら?」
「待て、今のは誤解だ。」
「ならさっきのは本心だったという事ね……?」
「だから………はぁ、せっかく褒めていると言うのに。」
「………」
俺の言葉にセラクリスは口をつぐむ。
照れているのか拗ねているのかよく分からない表情だ。意趣返しをされたのかと思ったが違ったようだ。
彼女の場合、素で勘違いするからややこしい。言葉の一つ一つに敏感に反応して来る。その辺りはキャンベル卿に似たんだろうな。
「閑話休題。」
「え?」
口に出して言う事ではないが、彼女は何だかんだ純粋であるというのが数日間を共に行動した感想だ。今までのは話は些末な内容だったと考えを改めてもらおう。
声色で話題の深刻さを伝える。
「セラクリス。君は今度の件をどう思う。」
「どう思うって……」
「単純に、印象や感想でも良い。学園生という事は王都に居たんだろう?もしかすると新たな発見があると思ってな。」
黒い紙に記されたメッセージの意味、それを解き進める事で、単純な人の力に寄らない方法で解決の糸口が見つかる可能性がある。
新たな被害者が遠方にいる以上、俺にできる事は力や魔法を使う事ではない。
「この程度なら、なんて思った私が居たわね。」
「………なに?」
今彼女は何と言った?この程度なら?
………予想していた返事と全く違うぞ。えらく心強い事を言うじゃないか。
「今回は“空”だけだった上に第一波の半分程度の量しか現れなかったわ。王都にいた時とは規模が小さかった。もし襲われていても、心のどこかで『撃退できる』と思い込んでいたわね。」
「………そうか。」
「心配は杞憂だったから良かったけれど、その慢心は危険よね………この市には王都ほどの戦力は居ないから、きっと甚大な被害が出ていたわ。」
やっつけで訊いてみただけだったが、まさか本当に俺の知らない事を聞けるとは思わなかった。当事者と人を跨いだ話とではこんなにも考え方が違うのか。
地面を見つめて余計な視覚情報を阻み、考える。
セラクリスは貴族として優れている、と思う。そこに特化していると考えると分かりやすい。
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