運命の日

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「陛下、殿下、健闘を祈ります。」 「ヨハン!可能ならば早めに戻って来てくれ!」 「はい。」 「その必要は無いよ。」 「……!」 馬車の元へ向かおうとしたヨハンに遠くから声が投げ掛けられた。一同が振り返ると、“第一区”の住民の群勢を引き連れたウェルとその母、ミレイが真剣な面持ちで城門の近くに立っていた。 「言ったじゃない、必ずまた戻って来るって。」 「私達を甘く見ないでね?」 「ウェル?ミレイまで……」 「あ、屋敷から一応重要なものは持って来たつもりだけど、これで良いかな?」 「いや、うん……凄く助かるんだけどね。」 父ヨハンの言葉を軽く流したウェルは引き連れている従者が抱えているものを見せる。それを見てヨハンは困った様に苦笑した。 「助かるよウェル君。早く城の中に避難するんだ。」 「いやいや、それを言うなら王子様達の方でしょ。魔法も使えない、兵も街に出した手薄な状態で自衛出来るの?」 「うっ……」 広い目で周りを見る事が出来ても、自分達を省みることが出来なければ台無しである。物理的な弱さを指摘されたゼノンは言葉に詰まった。 「────何のためにプリム家は王城のお膝元に在ると思ってるのです。」 「………!」 夫の顔を見上げ、ミレイは睨みつける様にして己の家系の本質を説いた。それを聞いたヨハンは不意を突かれたように黙ってしまう。 「時間が無い!皆の者!城の中に入るのじゃ!」 アデルの一喝によって第一区の住民達が城の中に入って行く。原因を究明する一同も国家総合対策室へと急いだ。 「母さんも行くんだよ?」 「回復役が一人くらい居た方が良いと思わない?次期当主の腕の見せ所ね、ウェル。」 「もうっ……からかわないでよ。」 呑気そうに話すミレイは流石ヨハンの妻と言えよう。身の危険に動じない肝っ玉を披露している。 ウェルは一息つくと、今だ動揺を拭えず焦った顔で空を見上げている兵の共々に方を向いて声を張り上げた。
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