運命の日

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『──────聞けッ!!!』 「──────ッ!!?」 男にしてはやや高い声が魔力に乗って響く。右往左往して城の守りに就く衛兵達はウェルの声に驚き体を向けた。 『陛下方は手が離せない状況に陥られた!現時点より、報告を除く対策室への入室を制限する!』 皆が戸惑った顔でウェルを見ている。初めて見る無邪気だった少年の指導者としての顔に驚いているのだ。 『衛兵はこのウェル・プリムと共に城門前に壁を作りつつ民間人を保護し、戦いに備えてもらう!城壁に立つ者は空を警戒しつつ我々の後退と共に城門を閉ざせ!一体たりともこの城への侵入を赦すな!!』 『ハ、ハッ!!』 『回復役は我が母ミレイ・プリムが務める!同役を希望するものは此処に待機しろ! ───敵の手は既に見えるところまで迫っている!直ちに配置に付け!!』 『イエス、サー!!!』 散開の合図に、兵隊長を失った衛兵達はウェルの言葉に従って迅速に配置に付いて行く。誘導の実現にウェルは安堵の息をもらす。 「やるじゃない。」 「────『五大貴族専用統治学』最終巻、“非常行動について”……目が三角になるほど読んだからね。幾ら何でもあの分厚さを三十巻は多過ぎない?」 「次期当主の責務じゃない。エル君は中等部の内に三周もしてたんでしょう?」 「彼の場合、あれは勉強じゃなくて趣味だったからね。貴族に関する知識で右に出る人は居ないよ。」 指示を終えたウェルは指示通りに自らも城門の外へと駆け出す。走りながら魔武器の杖『ホープ』を取り出した。 「怪我しないようにね!」 「分かってる!」 見たことも無い風貌をしている魔物が建物の隙間から飛び出し、城門の目の前に姿を現す。ウェルは身体強化を施し、それぞれの武器を構えて息を飲む兵達の後ろから跳躍した。 「『アイシクルバレット』!」 「おおっ……!」 杖の先端から無数の氷棘(こおりおどろ)が飛び出す。息の絶えかけた顔で此方へと逃げ惑う民の間を潜り、的確に継接(つぎは)ぎに見える魔物の体を貫いて行く。 「ッ……あれは!?」 「なっ……傷が治って……!?」 ウェルの豪快な初手に士気を上げる皆だが、直ぐに驚きに包まれた。氷棘によって貫かれた魔物の傷があっという間に再生したらからだ。 同じ様な現象をウェルは知っている。人型の魔物及び魔族も超速再生を実現させていた。
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