おもしろき こともなき世に おもしろく

3/9
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 このような愚痴を欝々とこぼしてはいるが、実は私自身には未来からのメールが未だに一通も届いていない。  メールが届かないということは……ああ、もしかしたらこの世界の未来に私は存在していないのかもしれない。  こんな生きる価値も見い出せない "つまらない世界" を憂いて自らの命を絶つ……うん、残念ながらそれも十分に考えられることだ。  私はこの世界のひどく退屈なシステムを本当に快く思っていない。仮に今、『過去の自分にメールを送れるぞ』と勧められても私は絶対に筆を執らないだろう。  ――ああ、もしかしたら未来の自分も今の私と同じ思いで、この "つまらない世界" に抗い、筆を執ることを拒否し続けているのだろうか?  もし、そうなのだとしたら……うん、私はそんな未来の自分を心の底から誇りに思いたい。そして、そんな未来の自分の姿を心の拠り所として、私はこの "つまらない世界" を生きていくのだ。  そのような事を一人考えている折、手にした携帯電話から鈍い振動音と共に私にも未来を告げるアラーム音が響いたのである。  メール受信――1件。  差出人は――自分。  送信日は――10年後の未来。  ああ、まさか……到底信じたくはないが、そう、それは正真正銘、未来に生きる自分から今の世界を嘆く私へと送られてきたメールであった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!