第1章

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ひゅうひゅうと喉が鳴っていることに不意に気付く。過ぎた呼吸、過呼吸。自分の、脆弱性、というものにたくさん気付かされる人生をこれまで歩んできたように思う。すべては内面的なものであったけど、たった一つ、外側の世界に見えてしまうこの脆弱性が一番嫌いだった。 ぶぶっ、とポケットの中から音がする。いま、使う、わたしの携帯電話。スマートフォン、という、イマドキの機械。中学校の同窓会のお知らせ。いいえ出ません。さようなら。内側から溢れる言葉をどうにかオブラートに詰め込んで、わかりやすく柔らかい言葉に変える。 生まれ変わり、の、よう。 過呼吸の影響でガタガタと震える指先でどうにか文字を打ち込んで戻ってきたメッセージに幾つかまた返信をする。機械的な文字たちを眺めるわたしの目は、事務的であり義務的である。 情けなくて涙が出た。ガタガタと震える指先も、いまだ言う事を聞かない呼吸器たちも、今更鳴り出すガラケーも、とても嫌い。たくさんの嫌いが今日も降り積もる。 こうしたときに、逃げられる場所を持っているのが、たぶんわたしの、しあわせ。
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