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「俺、叫んでた。ごめんってタロウに謝ってた。俺のせいで死なせてしまってごめん。年甲斐もなく地べたに座り込んで泣き喚いた。そしたら一瞬フワァっと温かい空気に包まれたんだ。一瞬だったけどタロウに抱きしめられた気がしたんだ」
赤い目が訴えかける。その時起こった奇跡を、一瞬も取りこぼさないように私に訴えかけている。
「それ以来周りにいつもあった気配が消えていた。タロウを感じることはなかった」
ふぅっと力が抜ける。
雨は止んでいた。
「タロウは俺が心配でずっと側で見守っていてくれてたんだ。それを俺は……。タロウはもう心配ない、大丈夫って思ってくれたんだろうな。長いこと心配かけちゃったよ。今でもアイツは俺のヒーローだ」
色をなくしていた顔がパァっと明るくなった。
私はほっとする。
彼の頬がじんわり赤く染まった。
あれ、照れてる?
彼は膝上の子猫を両手でそっと抱き上げた。
「なあ。子猫、タロウって名前にしてもいい?」
この子、女の子だよ?
了
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