第1章

4/4
前へ
/4ページ
次へ
「俺、叫んでた。ごめんってタロウに謝ってた。俺のせいで死なせてしまってごめん。年甲斐もなく地べたに座り込んで泣き喚いた。そしたら一瞬フワァっと温かい空気に包まれたんだ。一瞬だったけどタロウに抱きしめられた気がしたんだ」 赤い目が訴えかける。その時起こった奇跡を、一瞬も取りこぼさないように私に訴えかけている。 「それ以来周りにいつもあった気配が消えていた。タロウを感じることはなかった」 ふぅっと力が抜ける。 雨は止んでいた。 「タロウは俺が心配でずっと側で見守っていてくれてたんだ。それを俺は……。タロウはもう心配ない、大丈夫って思ってくれたんだろうな。長いこと心配かけちゃったよ。今でもアイツは俺のヒーローだ」 色をなくしていた顔がパァっと明るくなった。 私はほっとする。 彼の頬がじんわり赤く染まった。 あれ、照れてる? 彼は膝上の子猫を両手でそっと抱き上げた。 「なあ。子猫、タロウって名前にしてもいい?」 この子、女の子だよ? 了
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加