週刊「まかない」 No.1

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----- 2015/11/14 -------------------- 焦げた匂いがした。 気分転換にと少し山に来てみたが、山火事だろうか。 いや、違和感がある。 雨上がりの湿った土と樹木の匂いの中で一際強い匂い。 しかし煙も全く見えず、何より焦げた匂いがやけに強い。 近い。 木が焦げた匂い、すぐ近くだ。 少し道から外れて探し、すぐに見つけることができた。 一本のこげ茶色の古木から、その匂いは出ていた。 いや、木というよりも、その"中"だ。 木の裏は大きく抉れており、地下へ階段上に土が掘られている。 人工的に作られた何か。 その奥から漂う匂いだった。 私は、好奇心に駆られた。 ----- 2015/11/15 -------------------- 鳥居の奥に上品な灯籠が見えた。 石畳の道の真ん中に。 暗闇の中、光る灯籠。 夜、全ての照明が消えている。 しかし、その灯籠だけは例外だった。 なぜ、この灯籠だけが光るのか。 光らせておく必要があるのか。 光らせているのは誰なのか。 ここしばらく灯籠についてばかり考えていた。 詳しく、詳しく確認するべく。 灯籠に手を伸ばした。 ふわっ、と。 視界の端に、金色の蝶が舞った。 ----- 2015/11/16 -------------------- 石造りの城壁の外、鎖帷子と槍で武装した兵士が二人。 「その異邦人が言うには、東の国には"四季"というものがあるらしい」 「四季? なんだいそりゃ」 「よくわからんが、日によって温かくなったり寒くなったりするらしい」 「そりゃあ、ここでも同じじゃねぇのか?」 兵が談笑していると、正面から黒装束の男が歩いてきた。 黒の修道服のようだが、男の体格は戦士のそれである。 「おーい! 旦那すまねぇー、今日は叙勲式でなー、城の人間以外は入れられないだー!」 男の耳に届いたようだが、つかつかと向かってくるその足は止まらない。 「なんだ?、教会の人かな?」 「いやぁ、黒の修道服なんて見たことねぇ」 警戒色を徐々に強める兵たち。 槍を突き出せば届く距離で、男は止まった。 「"冬"を告げにきたぞ」
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