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----- 2015/11/10 --------------------
海を愛した一人の男がおりました。
男は日が昇っても沈んでも、毎日海へ来ては水平線に向かってその気持ちを投げかけていました。
その気持ちが届いたのか、ある日、海の彼方から方舟に乗った女が現われた。
女は海の使者であると言う。
女は男に言う、人と海が交わることはない、諦めよ、と。
なるほど、たしかに人は海の中では生きられぬ、と男は納得するものの
海への愛が消えることはありませんでした。
それから海の使者が現れることはありませんでしたが、
男は変わらず昼も夜も海に来ては、海を想い海に寄り添いました。
百を超える季節が流れました。
人はやがて老いて死ぬもの、男にも死期が訪れました。
もう長く無いことを理解した男は、自らの意志で海の中にその身を沈めました。
男は命を落としました。
海が冷たくなり、また温かくなった頃のことです。
海からひとつの方舟が浜に流れ着きました。
乗っていたのは、赤ん坊でした。
----- 2015/11/11 --------------------
俺、壊れた。
頭、壊れた。
大事なところ。
もう役に立たない、らしい。
修理できない、らしい。
足が埋まった。
腹が埋まった。
腕が埋まった。
俺、埋葬された。
動けない。
暗い。
バッテリー残量確認。
機能停止まで、あと―――
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