憂等生の私のこと

2/19
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
私は良く出来た小学生だ。 頭も良くて、運動神経も良い。 性格も控えめで口答えしない。 近所のおばさんの会話では、私の噂が耐えない。 口を揃えて「いい子」って呼んでくれる ……けどね、分かってる。知ってるの。 こんなに完璧な人間がいたら、嫌になることぐらい。 だから、今もほら。 「いい子」という言葉に混じって「実は性格が悪い」とか「女の子の友達少なそう」とか言われてる。 「母親がお月謝が高い塾に通わせている」とかも言われてる。 これは事実だから、なにも言えない。 それに、言ったところで怒られるだろうし。 嫌な顔するだろうし。 だから、私はおばさん達の横を通り過ぎた時に 笑顔で「こんにちは」と言うだけ。 おばさん達は「子供だから噂なんて聞こえない」、って思って、何もなかったように笑う。 でも、でもね、全部分かってるんだ。 だって、こんなの教室でもよくあること。 テストで満点とって先生が私を褒める。 工作で受賞して褒める、 作文で入選して褒める、 体育で倒立できて褒める。 そうするとね、次の休憩時間は、ひそひそ話でいっぱいになる。 内容? 「昨日、アイツ男子に媚売ってた」とかかな。 そう。アイツは私。 あと、媚は売ってないと思うのにな。 何時間目の話なのかとかも詳しく言わないで、ふわっとした内容で話をすすめているし。 噂する人は、みんな、名前じゃなく、あだ名でその人の事を言うんだ。 みんな、みんな噂をしてる人たちは不思議だ。 そのあだ名だけで気付かないって思ってる。 でもね、気付いてるし、傷付いてる。 けど、これぐらい平気なの。 だって私より辛い思いしてる人は、いっぱいいるから負けてられないよね。 それに、こんなに完璧な人間。 私だって嫌になる。 だから、私は言われて当然な人間なんだ。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!