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二人の話し声は、私の耳にも届いていた。嘘……私、廃部届けなんて提出してないよ。誰がやったの? どうして、こんな酷い仕打ちを。真面目に活動してたよ、私たち。
ショックとパニックで、涙が溢れでてきた。相変わらず隣は汗臭いし気持ち悪いし、もういやだ。帰りたい、逃げ出したい。というか、誰か助けて!
「きゃああっ!」
突然、あたり一面が真っ暗になった。照明が消えた!?
講堂の窓は全て暗幕で覆われていたため、会場内は真っ暗闇に包まれた。
♪♪♪?♪♪??♪♪♪♪♪?☆♪ ♪♪☆♪♪♪☆♪☆♪♪?♪♪☆☆♪♪♪♪
間もなくして講堂内にクラシック調のノスタルジックな音楽が響き渡った。ほんのり照らされたステージに二人、スーツ姿でバイオリンを奏でている男性の姿が見えた。
ステージ中央では、さっきのシルクハットの男が忙しそうに電子キーボードを奏でている。不思議なビート感があって、聴き入ってしまう。
あれ? この曲、どこかで聴いたことがあるような……。
「ん? 花びら? これは……薔薇?」
今度は講堂の真上から、たくさんの花びらが紙吹雪のように降り注ぎ、舞い降りてくる。
赤、黄、青、白と、目まぐるしく変化するステージライトが、講堂の中央付近を照らす。光の中心には赤、ピンク、黄、白、黒と多種多様な薔薇で彩られたゴンドラがあった。いつ、こんなものを講堂の上に仕掛けていたのだろうか。
薔薇で彩られたゴンドラには、真っ黒いゴシックドレスで身を包み、雅やかに輝いている少女が乗っていた。
クロアゲハチョウが擬人化したかのような、おとぎの世界からやってきたかのような、幻想的な美しさだった。あれ、この衣装見覚えがある。
「この衣装……知ってる。零式プルーンだ! うそっ、まるでホンモノみたい……」
感無量のあまり思わず叫んでしまった。私が大好きなアニメ『アリスロイド・ガールズ』に登場する敵役・零式プルーンそのものなのだ。
ゴンドラが近づくにつれ、少女の顔が鮮明に見えてくる。その顔は見覚えがあった。アニメのキャラクターに扮しているが、今現在、最も(私の中で)話題になっているアーティストだ。
「都城エレナ様だ……間違いない、ホンモノだ!」
これが、私、宮代藍凛と都城エレナ様。不思議で悪戯な、運命の出逢い。
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