第壱話『ライブジャック犯は、ゴスロリ少女!?』

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 ゴンドラから虹色に輝く無数の玉が飛散し、ゆっくりステージに向かって軌跡のように描いた。虹色の玉の正体はシャボン玉だ。  ♪♪♪☆♪♪?☆♪ ♪♪☆♪♪♪☆♪☆♪♪☆・♪♪♪☆♪♪?☆♪ 「♪愛しなさい♪ ♪その強さで♪ ♪私を懐抱(かいほう)するの♪」  しかも、しかも! この歌、思い出した! アリスロイド・ガールズ第二期オープニングテーマ曲『絶対少女聖歌』だよ! 私は戦慄した。生で聴けるなんて夢みたい。 「♪不惑憂懼(ふわくゆうく)安堵(あんど)をくれる♪ ♪あなたに従う♪」  このフレーズの瞬間、私とエレナ様の目線が合った。心臓が飛び出すんじゃないかと思うくらいに跳ね上がった。だって、だって、大好きな作品の主題歌を、本人が目の前で歌っているんだよ!? 「♪背負った罪業(ざいごう)♪ ♪(さかえ)を捨てて♪ ♪(あめ)より(くだ)りし顕現(けんげん)♪」  エレナ様が乗ったゴンドラは、静かにステージ中央で着地して、そのまま取り付けられたマイクを添えるように持ち、粛々と歌い続けた。  ステージライトが、赤と青で激しく交差し彩り、紫のスポットライトがエレナ様を妖しく照らす。 「♪照らす十字架で♪ ♪御国(みくに)(かど)へ招き♪ ♪勇み昇るの♪」  ステージのバックに巨大な十字架のスクリーンが映し出された。この学院に、こんなこと出来る設備あったの!? 「♪我が父よ♪ ♪清楚でいさせて♪ ♪純潔の挺身(ていしん)♪」  エレナ様はマイクを持ったまま、ゆっくりと私の方に向かってくる。 「♪少女のまま♪ ♪レーゾンデートル♪ ♪成さしめたまへ♪」  最後のフレーズの瞬間、エレナ様は観客席の方へ向いて手を振った。多数の拍手が講堂に響く。まばらだった観客が、いつの間にか凄い数に増えていたのだ。 「いつまで触ってるの」 「イタッ!」  エレナ様は私の肩を掴んだままだったオカマの手をつねった。 「気持ち悪かったでしょう? ごめんなさいね。さ、こちらへ」 「気持ち悪いなんて、ひどいわぁ」  不貞腐れるオカマを無視して、エレナ様は私の手を優しくそっと握ってくれた。細くて綺麗な指先の感触が、私の手から伝わってくる。ほんの少し冷たい手が不思議と気持ちよかった。  そのままステージ中央にある階段へと私は導かれた。 「足元、気を付けて」 「あ、ありがとうございます」
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