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私が階段を降りて、ステージの方へ振り返ると、エレナ様は優しい笑顔で手を振ってくれた。これぞ淑女、いや貴婦人の微笑みというべきか。TVで見る姿以上に上品で美しい。
これがまた、アニメで一度だけ見られる零式プルーンの微笑みにそっくりで、さらに私の心臓が大激動した。
「あれって、都城エレナ様じゃない?」
「本物? うそっ、本当にマジゴシ!?」
「本物よ! えっ、どうして来てるの!?」
私たちが演奏していた頃は、観客は十数名程しかいなかったが、今の騒動が呼び水になったらしく、次々に人が押し寄せ気付けば、ざっと二百名以上には増えていた。
突発的に有名人が現れた場合、大抵は群衆が押し寄せて混乱するのだが、ここは違う。歓声を上げたり、割り込んだりなんて、はしたないことは誰もしない。
学院祭実行委員の指示に従って、整然として順番に列び、誘導されるままに席に座っていく。さすが、お嬢様学校というところか。
「こんにちは、ラ・プティット・プペの皆さん。ライブジャック犯の魔法音快ゴシックです」
エレナ様が挨拶すると観客の生徒たちが一斉に拍手する。ライブジャック犯なんて過激なことを言っているにも関わらず、自然に受け止められていることに内心驚いた。
これが他の人気アイドルのライブだったら奇声上げたり、トーク中に◯◯ちゃあああん、かわいいだのノイズが混ざったりするんだけど、そういうのが一切無い。
何度か声優系のライブに行ったことがあって、必ずと言っていいほど、そういう人種が何故か私の真横だとか真後ろにいて、何度耳を塞いだことか。出演してるアイドルやアーティストさんは大好きなのに。
「ところで、ラ・プティット・プペって、なあに?」
「フランス語で、可愛いお人形よ。確か」
後ろからヒソヒソと声が聞こえてくる。私も何だろうって思ったけど、そういう意味だったんだ。でも、どうして、お人形なんだろう?
「本日は、せっかく、キリスト教の学校に来たので、それにちなんで『アリスロイド・ガールズ』という、お人形さんが戦う、アニメの衣装にしてみました」
「その中で登場する、ナンバー零式プルーンって、キャラクターを、模してみました。似合ってるかは、分かりませんが」
拍手が沸き起こった。中には納得したように頷いてる人もいた。人気作だけに意外と知ってる者も多そうだった。
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