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ただ涙が零れる。
もう、群青の空は見えない。
自分から幸せを求めることができた。
「ね。約束、覚えてる?」
「約束?」
「結婚するって言ったんだよ。俺と江茉」
「……それ、いくつの時の話?」
「その日から俺の婚約者は江茉だけど」
「子供のままごと、本気にしたの?」
「おじさんとおばさんに誓ったから。あと、ウメさんにも」
「ウメさん?」
「亡くなる前日かな。帰国して会いに行ったんだよ。『あの誓いは絶対守るから』って」
「……」
「嬉しそうな顔してた」
こつん。
と、おでこをあわせる。
景くんの動きが止まり、ベッドの軋む音が止んだ。
目を閉じて呼吸を整える彼。
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