『ニャーチル』の店主

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 ここ猫目町(ネコメチョウ)にはちょっと変わった店がある。  駅前の商店街。そこをほんの少し離れるとさほど大きくない少し古い住宅地が見える。その中程に周りの住宅とはほんの少し違う空気を醸し出した細長い洋風の家が建っていた。  レンガ造りでオレンジ色をした屋根。さほど大きくない出窓が一つ。蔦の生い茂り壁につたう様はほんの少しだけおとぎの国を想像させる。  その家の入り口の扉には『ねこカフェニャーチル』と木で猫の形にかたどられた看板がついていた。 「さぁ、皆さん。今日も楽しく稼ぎましょう!」  『ニャーチル』には店主の二矢田千琉(ニヤタチル)がいる。見た目は二十代後半くらい。男性の割に女性っぽく綺麗な長い黒髪を一つに束ね薄いフレームの眼鏡をかけている。  店内には四席の丸いテーブル、奥の部屋に続く扉の近くに小さなカウンターと五つの席。壁の周りに木で作られた猫用の階段と遊具が置いてある。
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